NISAで何を買うか。
この話になると、必ずと言っていいほど名前が挙がるのが、
S&P500とオルカン。です。
どちらも低コスト。
どちらも長期投資向き。
どちらも非常に人気があります。
そして実際、「どちらか決められないから両方買っている」
という人も少なくないと思います。
私自身も、
S&P500。全世界株式。
両方を保有しています。
ただ、ここで一つ疑問があります。
オルカンの中には、すでに米国株が大量に入っています。
それなのに、
さらにS&P500を買う。
これは本当に「分散」なのでしょうか。
それとも、同じ株を重複して持っているだけなのでしょうか。
今回は、「S&P500とオルカン、どちらが優れているか」ではありません。
S&P500とオルカンを“両方持つ意味”はあるのか。
ここに焦点を当てます。
先に結論を書くと、
オルカン+S&P500は「分散を増やす組み合わせ」というより、「世界株をベースにしながら米国を意図的に上乗せする組み合わせ」です。

つまり、
両方持つこと自体に問題があるわけではありません。
ただし、何となく半分ずつ買う
のと、米国比率を意図的に高めるために両方買う
のとでは、まったく意味が違います。
今回はここを数字で見ていきます。
S&P500とオルカンは何が違うのか
基本から整理します。
S&P500は、米国を代表する大型企業を中心とした指数です。
2026年8月末時点でS&P500の構成銘柄数は503銘柄。
時価総額加重型で、
上位10銘柄だけで指数全体の37.8%を占めています。
一方、オルカンこと、
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が連動を目指すのは、MSCI ACWIです。
MSCI ACWIは、先進国と新興国の大型・中型株を対象とし、
世界の投資可能株式市場のおよそ85%をカバーします。
2026年9月末時点の構成銘柄数は、2,414銘柄。
ざっくり言えば、
| S&P500 | オルカン | |
|---|---|---|
| 投資地域 | 米国 | 全世界 |
| 構成銘柄数 | 約500 | 約2,400 |
| 米国株 | 100% | 約6割強 |
| 新興国 | なし | あり |
| 日本株 | なし | あり |
| 欧州株 | なし | あり |
| 特徴 | 米国集中 | 世界分散 |
これだけ見ると、
かなり違う商品に見えます。
しかし、中身を見ると、意外なほど似ています。

オルカンの約6割は、すでに米国
ここが、最初に押さえておきたいポイントです。
2026年9月末時点で、MSCI ACWI全体の時価総額は約102.69兆ドル。
一方、米国を除いたMSCI ACWI ex USAは約36.75兆ドルです。
この差から単純に逆算すると、米国部分は約65.94兆ドル。
比率にすると、約64%。となります。
つまり、オルカン100万円を持っている場合、
イメージとしては、
- 約64万円:米国株
- 約36万円:日本・欧州・新興国などの非米国株
という構成です。
「オルカンを買えば米国株から離れられる」というわけではありません。オルカンそのものが、すでにかなり米国中心のポートフォリオです。
これは、米国企業が世界の株式市場でそれだけ大きな時価総額を持っているからです。

さらに上位銘柄もかなり重複している
もっと具体的に見ます。2026年9月末のMSCI ACWI上位銘柄は、
- NVIDIA
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- Alphabet
- Taiwan Semiconductor Manufacturing
- Meta Platforms
- Broadcom
- Micron Technology
などです。
一方、
S&P500の上位には、
- NVIDIA
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- Alphabet
- Broadcom
- Meta Platforms
- Micron Technology
- Tesla
などが並びます。
ほとんど同じです。
MSCI ACWIの上位10構成銘柄を見ると、
台湾のTSMCを除けば、
ほぼ米国の巨大企業です。
オルカンとS&P500を両方買っても、NVIDIAやApple、Microsoftを別々に持つわけではありません。同じ企業への投資比率をさらに高めることになります。
ここは、「2本の投資信託を持っている=2倍分散されている」
と考えない方がいいところです。
「ファンド数」と「分散」は別物
投資では、商品数が増えると、なんとなく分散できているように感じます。
例えば、
1本だけより2本。2本より5本。
しかし、重要なのは、何本持っているかではありません。
中身がどれだけ違うか。です。
例えば、
- S&P500
- NASDAQ100
- FANG+
- 全世界株式
を4本持っていたとしても、
上位には同じ巨大テック企業が何度も登場します。
見た目では4商品に分散しています。
しかし、資産の中身では、
- NVIDIA
- Microsoft
- Apple
- Amazon
- Alphabet
- Meta
といった企業への比率がかなり高くなっている可能性があります。
分散を見るときは「何本の商品を持っているか」ではなく、「最終的にどの国・企業・セクターへ何%投資しているのか」を見る必要があります。
オルカン+S&P500を持つと米国比率はどうなる?
ここからが今回の記事の本題です。
仮に、オルカンの米国比率を約64%とします。
S&P500は、当然100%米国です。
では、この2つを組み合わせると、
ポートフォリオの米国比率はどうなるでしょうか。
オルカン80%+S&P500 20%
米国部分は、オルカン部分
80% × 64%=51.2%
そこに、S&P500の20%を足します。米国比率:約71%
です。
オルカン70%+S&P500 30%
70% × 64%=44.8%
そこに、S&P500の30%。米国比率:約75%
となります。
オルカン50%+S&P500 50%
50% × 64%=32%
そこに、S&P500の50%。米国比率:約82%
です。
オルカン30%+S&P500 70%
30% × 64%=19.2%
そこに、S&P500の70%。米国比率:約89%
です。
| オルカン | S&P500 | 実質的な米国比率の目安 |
|---|---|---|
| 100% | 0% | 約64% |
| 80% | 20% | 約71% |
| 70% | 30% | 約75% |
| 50% | 50% | 約82% |
| 30% | 70% | 約89% |
| 0% | 100% | 100% |
※MSCI ACWIの米国比率を約64%として単純計算した概算です。実際の比率は指数構成の変化などにより変動します。
この表を見ると、
かなり印象が変わると思います。
オルカンとS&P500を50%ずつ持っても、「米国50%・世界50%」になるわけではありません。実際には約8割が米国株です。

両方持つ意味はないのか?
ここまで読むと、「そんなに重複するなら、どちらか一つでよくない?」
と思うかもしれません。
確かに、シンプルさを最優先するのであれば、それも合理的です。
両方持つこと自体が無意味だとは思っていません。
むしろ、目的が明確なら、非常に使いやすい組み合わせです。
その目的とは、米国への配分を自分で調整すること。です。
オルカンを「世界株の土台」として使う
オルカンの面白いところは、自分で国を選ばなくても、
世界の時価総額に応じて配分が変化していくことです。
例えば、
今後も米国企業が強ければ、米国の時価総額は大きいまま。
オルカンの米国比率も高い状態が続きます。
一方、将来、
- 日本
- 欧州
- インド
- 台湾
その他新興国。などが米国以上に成長し、
世界の時価総額シェアを伸ばせば、
オルカンの中で、それらの地域の比率が自然に上がっていきます。
つまり、投資家が、
「次はインドだ」
「次は日本だ」
と予想しなくても、市場側が勝手に調整してくれます。
MSCI ACWIは先進国・新興国の大型株と中型株を対象とし、世界の投資可能株式のおよそ85%をカバーしています。
オルカンの強みは「世界中に均等投資すること」ではなく、「世界の時価総額の変化に合わせて、自動的に勝者の比率が変わること」です。
S&P500を足す意味
では、そのオルカンに、
S&P500を加える。何をしているのでしょうか。
これは、言い換えると、
「市場が決めた米国比率では少し足りないので、自分の判断で米国をオーバーウェイトする」
ということです。
例えば、オルカン100%なら、米国約64%。
しかし、米国企業には依然として、
- AI
- クラウド
- 半導体
- ソフトウェア
- 巨大な資本市場
- 高い利益率
- 世界的ブランド
などの強みがあると考えている。
だから、米国を75%程度まで増やしたい。
その場合、
オルカン70%。
S&P500 30%。
という組み合わせには、明確な意味があります。
「オルカン+S&P500」は、オルカンだけでは物足りない人が、世界分散を残しながら米国株を上乗せするための戦略と考えると分かりやすいです。
逆に「米国を減らしたい人」には向いていない
ここも重要です。
最近は、
- 米国株の高バリュエーション
- 巨大テックへの集中
- 米国財政問題
- 高金利
- ドルへの不安
などから、
「米国依存を下げたい」と考える人もいます。
そういう人が、オルカンとS&P500を両方買う。
これは、少し方向が矛盾しています。
オルカンには、すでに米国株が大量に入っているからです。
そこへS&P500を追加すれば、米国比率はさらに上がります。
米国比率を下げたいのであれば、選択肢としては、
- オルカンだけにする
- 日本株を別に加える
- 先進国株式(米国除く)を加える
- 新興国株式を加える
- インド株などを個別に加える
といった方法の方が、
目的には合っています。
「分散したいからオルカンも買う」という理由だけでS&P500と組み合わせると、思ったほど米国依存は下がりません。
50:50は意外と攻めた配分
「迷うから半分ずつ」という考え方。
直感的には、かなり中立に見えます。
S&P500 50%。
オルカン50%。
米国集中と世界分散のちょうど中間。
そんな印象を持つと思います。
しかし、先ほど計算したとおり、
実質的な米国比率は約82%。です。
S&P500とオルカンを50:50で持つポートフォリオは、「中立型」というより、かなり米国寄りの世界株ポートフォリオです。
これは悪いという意味ではありません。
重要なのは、それを理解したうえで持っているかどうかです。
両方持つなら「比率」に意味を持たせたい
S&P500とオルカンを両方持つこと自体には賛成です。
ただし、「とりあえず半分ずつ」
ではなく、自分がどの程度米国を信じているのか。
そこから逆算した方がいいと思っています。
世界分散をかなり重視したい
- オルカン:100%
米国比率は市場に任せる。
非常にシンプルです。
世界分散+少し米国を強めたい
- オルカン:80%
- S&P500:20%
米国比率は約71%。
米国を主力にしながら世界も持ちたい
- オルカン:50%
- S&P500:50%
米国比率は約82%。
米国をかなり強く信じる
- オルカン:30%
- S&P500:70%
米国比率は約89%。
こう考えると、「S&P500とオルカンを何%ずつ持つか」
ではなく、「米国を何%持ちたいか」から考えられます。
「商品」より先に国の比率を見る
資産配分を考えるときには、商品名だけでは判断しません。
- S&P500。
- 全世界株式。
- 日本株。
- 先進国株。
- 新興国株。
- インド株。
これらを全部別々の商品として見ると、ポートフォリオが複雑に見えます。
しかし、最終的には、どこの国に、どれくらいの比率で投資しているのか。
ここを見ます。
例えば、
S&P500とオルカンを持っていたとしても、
「2つのインデックスを持っている」
ではなく、「米国が約何%、非米国が約何%」
と考えます。
投資信託は「箱」です。大切なのは箱の名前ではなく、その中に何が何%入っているかです。
2026年だからこそ「重複」を意識したい理由

現在のS&P500は、
以前よりも上位企業への集中度が高くなっています。
2026年8月末時点で、
S&P500上位10銘柄のウェイトは、37.8%。
約500社に投資している指数ですが、実際には上位10社だけで4割近くを占めています。
一方、
MSCI ACWIも、
NVIDIAが5.11%、Appleが4.76%、Microsoftが3.52%と、
米国巨大テックの影響を強く受けています。
そのため、オルカンとS&P500を両方持てば、地域として米国を上乗せするだけではありません。
結果として、
巨大米国企業も上乗せすることになります。
現在の市場環境では、この意味は以前より大きくなっています。
例えばNVIDIAはどうなる?
分かりやすく、NVIDIAで考えてみます。
MSCI ACWIにおけるNVIDIA比率は、
2026年9月末時点で約5.11%です。
つまり、
オルカン100万円なら、
指数ベースではざっくり、約5万円相当がNVIDIAです。
そこへ、さらにS&P500を加える。
S&P500でもNVIDIAは最大級の構成銘柄です。
すると、NVIDIAへの実質配分は、
オルカン単体より当然高くなります。
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- Alphabet
- Meta
- Broadcom
なども同じです。
オルカン+S&P500とは、「米国を増やす」だけでなく、「米国メガキャップへの配分も増やす」戦略でもあります。
両方持つメリットはある
ここまで重複について説明してきましたが、
「重複=悪」とは考えていません。
意図的な重複なら、まったく問題ありません。
両方持つメリットはあります。
- 米国一極集中より地域分散を残せる
- オルカン単体より米国成長の恩恵を取りやすい
- 将来米国以外が成長した場合も一定程度取り込める
- 自分の米国比率を調整しやすい
- S&P500かオルカンかという二者択一にしなくてよい
個人的には、
特に最後が大きいと思います。
投資では、何でも、「AかBか」で考えがちです。
実際のポートフォリオには、その中間があります。
オルカンの最大の魅力は「未来の勝者を決めなくていい」こと
オルカンの本質的なメリットは、
単なる分散ではないと思っています。未来の勝者を自分で決めなくてもいい。
今は、米国が世界株式市場の中心です。
だから、オルカンも米国比率が高い。
しかし、
20年後もそうなのか。これは分かりません。
もしかすると、米国の比率はさらに高くなっているかもしれません。
逆に、
- 日本
- インド
- 台湾
- 欧州
- 中国
その他の新興国。の存在感が増えているかもしれない。
オルカンなら、時価総額の変化によって、その変化を自動的に取り込みます。
オルカンとは「世界は均等に成長する」と賭ける商品ではありません。「どこの国が勝っても、その勝者を保有できる」ことに賭ける商品です。
S&P500は「米国がこれからも強い」に賭ける
S&P500は、もっと明確です。
米国企業が、これからも世界経済の中心であり続ける。
- 米国の資本市場
- イノベーション
- 人材
- 企業利益
こうした強みが続く。そこに賭けます。
S&P500そのものは米国企業に集中しています。
そして現在、上位10銘柄だけで37.8%を占めています。
したがって、オルカンよりも、
米国大型株。特に巨大企業の影響を強く受けます。
だからこそ、高い成長を享受できる可能性もあります。
同時に、
米国が失速した場合の影響も大きくなります。
「両方持つ」は中途半端なのか?
こんな意見があります。
「オルカンとS&P500を両方持つのは中途半端。」
必ずしもそうは思いません。
問題は、両方持つことではありません。理由なく持つこと。です。
例えば、
「どちらがいいか分からないから50%ずつ」なら、少し考え直してもいいかもしれません。
一方で、
「世界市場をベースにしたい。ただし米国にはまだ強気なので、米国比率を80%程度まで高めたい」
という理由なら、
オルカン+S&P500は非常に分かりやすい手段です。
同じ組み合わせでも、「迷った結果の50:50」と「狙って作った50:50」では、投資戦略としての意味がまったく違います。
私ならどう考えるか

S&P500だけにすべてを集中するより、
米国以外の地域も持っておきたいと考えています。
一方、
米国企業の成長力を完全に否定するつもりもありません。
そのため、考え方としては、
米国をコアの一つとして持ちながら、米国以外も意図的に組み合わせる。
という形です。
ただし、ここで重要なのが、
オルカンを買っただけで、十分に米国比率を下げられたと思わないこと。
オルカン自体にも、
かなりの米国株が入っています。
そのため、本当に米国依存を抑えるのであれば、
オルカン+S&P500だけではなく、
- 日本株
- 先進国株式(米国除く)
- 新興国株式
などを別に組み合わせる方法もあります。
初心者なら無理に2本持たなくてもいい
ここまで、両方持つ戦略について考えてきました。
ただ、投資初心者の場合、
無理に2本持つ必要はないと思います。
むしろ、シンプルさは大きな武器です。
オルカン1本が向いている人
- 国を予想したくない
- 世界全体に投資したい
- ポートフォリオ管理を簡単にしたい
- 米国以外の成長も取り込みたい
S&P500 1本が向いている人
- 米国の長期成長を強く信じている
- 非米国株を持たなくても気にならない
- より集中した投資を受け入れられる
- 大きな値動きでも長期保有できる
両方が向いている人
- 世界分散を残したい
- ただし米国比率は市場平均より高めたい
- 自分で比率を決めたい
- リバランスを苦にしない
このくらいの整理で十分だと思います。
NISAなら「枠を埋めること」より持ち続けられる構成を
NISAでは、何を買えば最も儲かるのか。
という話になりやすいです。
しかし、それ以上に、長期間持ち続けられるかが重要だと思っています。
S&P500が大きく下落したとき、
「やっぱりオルカンにしておけばよかった」と思って売る。
オルカンがS&P500に負け始めたとき、
「やっぱりS&P500だった」と思って乗り換える。
これを繰り返す方が、長期では問題になります。
S&P500かオルカンかという「正解探し」より、自分が暴落時にも持ち続けられる配分を作る方が重要です。
まとめ|両方持つなら「米国を何%にしたいか」から考える
S&P500とオルカン。
両方とも、長期投資の王道です。
しかし、この2つは、まったく別の資産ではありません。
オルカンには、すでに大量の米国株が含まれています。
2026年9月末のMSCIデータから概算すると、米国比率は約64%。
さらに、
- NVIDIA
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- Alphabet
- Meta
- Broadcom
など、主要銘柄もS&P500と大きく重複しています。
S&P500とオルカンを両方持つ意味を考えるとき、
「分散できるか」だけでは不十分です。見るべきなのは、最終的な米国比率です。
オルカン100%なら、約64%。
オルカン80%+S&P500 20%なら、約71%。
70%+30%なら、約75%。
50%+50%なら、約82%。
オルカン+S&P500は「世界分散+米国株」ではなく、「世界分散を土台に、米国比率を自分で上乗せする戦略」と考えるのが最も分かりやすいと思います。
両方持つことに、
正解も不正解もありません。
ただ、「みんなが買っているから」
ではなく、なぜその比率なのか。そこまで説明できるようになると、
ポートフォリオはかなり分かりやすくなります。
商品名を見る前に、まずこう考えます。
自分は米国を何%持ちたいのか。
その答えが決まれば、
S&P500。
オルカン。
あるいは、その他の地域別インデックス。
何をどれだけ組み合わせるべきかも、自然と見えてくると思います。
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