Steve Jobs「点と点は後からつながる」|意味が見えない努力を、それでも続けられるか?

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【人生とお金を考える 第4回】

今、自分が続けていることには、本当に意味があるのだろうか。

仕事や勉強、趣味、あるいは自分で決めた目標に向けた努力。

最初は楽しかったはずなのに、いつの間にか辛くなっていることがあります。どれだけ頑張っても成果が見えず、「このまま続けていいのだろうか」と考えてしまうこともあるでしょう。

反対に、最初は嫌々始めたことでも、続けているうちに面白さを感じるようになることもあります。

人生とは不思議なものです。

今は無意味だと思っていた経験が、10年後に思いがけない形で役立つかもしれない。逆に、将来のためになると信じていたことが、期待していた結果につながらないかもしれません。

では、私たちは何を信じて行動すればよいのでしょうか。

今回の「人生とお金を考える」では、Appleの共同創業者スティーブ・ジョブズの言葉から、努力を続けること、やめること、そして自分自身と向き合うことについて考えてみたいと思います。

1. ジョブズが語った「点と点は後からつながる」

2005年6月12日、スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式でスピーチを行いました。

そこで語られたのが「Connecting the Dots(点と点をつなぐ)」という考え方です。

ジョブズはリード大学に入学して約6か月後、中退を決意しました。

将来何をしたいのか分からず、大学での勉強が自分の人生にどう役立つのかも見えなかったからです。

さらに、学費には両親が長年かけて蓄えたお金が使われていました。

しかし、大学を中退した彼は、学ぶこと自体をやめたわけではありません。

興味を持った授業には、その後も参加していました。

その一つが「カリグラフィー」という、美しい文字を書く技術を学ぶ授業でした。

当時のジョブズにとって、それが将来どのように役立つのかは分かりませんでした。

ただ、その美しさや奥深さに魅力を感じていたのです。

そして約10年後。

最初のMacintoshを開発するとき、その経験が生きることになります。

文字のデザインや文字間の余白に関する知識が、Macintoshの美しい書体の実現につながったのです。

ジョブズは、この経験を振り返って語りました。

“You can only connect them looking backwards.”

点と点は、振り返ったときに初めてつながる。

当時は将来につながると分からなかった経験が、後になって意味を持ったのです。

しかし私は、ここで一つの疑問が生まれます。

未来になって初めて意味が分かるのなら、意味が分からない今を、私たちはどう生きればよいのでしょうか。

2. 正しい選択かどうかは、今は分からない

私たちは何かを決めるとき、できるだけ正しい選択をしたいと考えます。

将来役立つ資格を取る。

収入が増えそうな仕事を選ぶ。

成果が期待できることに時間を使う。

どれも合理的な判断でしょう。

しかし、その判断が本当に正しかったかどうかは、選んだ時点では分かりません。

正しいと思った道が、後になって間違いだったと感じることもあるでしょう。

反対に、意味がないと思っていた経験が、思いがけない場面で役立つこともあります。

ジョブズのカリグラフィーの経験は、その一例です。

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。

すべての経験が、必ず将来役立つわけではありません。

努力したからといって、必ず報われるわけでもないでしょう。

だからこそ私は、この言葉を「無駄な経験などない」という単純な話として受け取りたくありません。

未来が分からないからこそ、今の自分が何を選び、どう行動するのか。

そこに意味があるのではないでしょうか。

3. 意味が分からない努力を、それでも続けられるのか

ジョブズは、将来いつか点と点がつながると信じることの大切さを語っています。

確かに、その考え方には納得できます。

しかし、実際に成果の出ない状況に置かれたらどうでしょうか。

半年頑張っても結果が出ない。1年続けても何も変わらない。それが将来役立つ保証もない。

それでも、努力を続けられるのでしょうか。

私は、自分で目標を持ち、やると決めたのであれば、その目標に向かって行動することが大切だと思います。

やらなければならないことなら、向き合うしかない。自分で決めた目標ならば、なおさらです。

ただし、何も考えずに続ければよいとは思いません。

成果が出ないのなら、原因を考える。

やり方が間違っているのなら、変えてみる。

失敗したのなら、そこから学ぶ。

頭を働かせ、試行錯誤を繰り返しながら行動することが重要だと思います。

努力を続けることと、同じ行動をただ繰り返すことは違う。

未来に意味があるかどうか分からないからこそ、今できることを考えて行動する。

その姿勢は大切にしたいものです。

4. 「好きこそものの上手なれ」は本当なのか?

ジョブズの講演には、もう一つ印象的な話があります。

それが「Love and Loss(愛と喪失)」です。

ジョブズは30歳のとき、自ら創業したAppleを追われました。

人生をかけてきた仕事を失い、大きな挫折を味わったのです。

しかし、そのとき彼は気づきました。

“I still loved what I did.”

それでも、自分がしていることを愛していた。

Appleから追われたことによって環境は大きく変わりましたが、仕事そのものへの愛情は失われていなかったのです。

彼はその後、新たにNeXTやPixarを立ち上げ、再び挑戦していきました。

私はこの話を聞いて、「好きこそものの上手なれ」という言葉を思い出しました。

好きなことであれば、自然と興味が湧く。

もっと知りたいと思うし、もっと上手になりたいと感じる。

自分から学び、試行錯誤を繰り返すことも苦になりにくいかもしれません。

そう考えると、好きだという感情は、努力を続けるうえで大きな力になるのでしょう。

しかし、私はここにも疑問があります。

好きだったことが、嫌いになることもある

最初は好きで始めたことでも、続けているうちに嫌いになってしまうことがあります。

仕事であれば、責任や人間関係、成果へのプレッシャーによって、以前ほど楽しめなくなることもあるでしょう。

趣味でも、上達を目指して努力するうちに、楽しむことよりも結果を出すことが目的になってしまうかもしれません。

反対に、最初は嫌だと思っていたことでも、続けるうちに好きになることがあります。

最初は難しくてつまらなかったことが、理解できるようになって面白くなる。

できなかったことができるようになり、達成感が生まれる。

そんな経験もあるのではないでしょうか。

私は、好きと嫌いは表裏一体のようなものだと思います。

同じことをしていても、置かれた状況や自分の考え方によって、感じ方は変わっていく。

ある一面では嫌だと思っていても、視点を変えてみれば楽しさを見つけられることもあるでしょう。

好きだから続けられることもあれば、続けたからこそ好きになることもある。

そう考えると、今好きか嫌いかという感情だけで、続けるかどうかを決めるのも難しいのかもしれません。

では、好きだったことが辛くなってしまったとき、どうすればよいのでしょうか。

5. 続けるか、やめるか。その前に自分と向き合う

私が大切だと思うのは、一度、自分自身と向き合ってみることです。

以前は、なぜそれが好きだったのか。

今は、何が辛いのか。

何が変わってしまったのか。

そして、自分はこれからどうしたいのか。

こうしたことを、自分自身に問いかけてみるのです。

例えば、好きだった仕事が辛くなったとします。

でも、よく考えてみれば、仕事内容そのものが嫌いになったわけではないかもしれません。

働く環境が辛いのかもしれない。

求められる成果が負担になっているのかもしれない。

あるいは、以前とは自分が大切にしたいものが変わったのかもしれません。

そうであれば、仕事そのものをやめなくても、環境や働き方を変えることで、再び楽しさを感じられる可能性があります。

もちろん、自分と向き合った結果、もう続けたくないという結論になることもあるでしょう。

私は、それでもよいと思います。

世の中では、途中でやめることを「逃げ」と表現することがあります。

しかし、逃げることが必ずしも悪いとは思いません。

本当に辛いのであれば、その場所から離れることも必要でしょう。

続けることも行動なら、やめることもまた、立派な行動だと思います。

ただし、やめることだけが正解でもありません。

視点を変えてみれば、もう一度楽しめることもあるかもしれない。

やり方を変えれば、続けられることもあるかもしれません。

だからこそ、自分の感情に目を向け、自分自身と対話することが大切なのだと思います。

興味深いことに、ジョブズ自身も講演の中で、自分に問いかける習慣について語っています。

彼は毎朝鏡を見ながら、今日が人生最後の日だったとしても、これからしようとしていることをしたいかどうか、自分に尋ねていたそうです。

そして、そうしたくないという答えが何日も続いたとき、何かを変える必要があると考えました。

私は、この姿勢に大切なものがあると感じます。

自分が何を感じているのかを知ること。

そして、その感情を無視せず、自分の選択を見直すこと。

自分を信じるということは、過去の選択に固執することではなく、今の自分と向き合い続けることなのかもしれません。

6. 点と点をつなぐには、多くの経験が必要なのか?

「点と点がつながる」という言葉について、もう一つ考えてみたいことがあります。

そもそも、点と点がつながるためには、少なくとも2つの点が必要です。

では、一つのことを長く続けるのと、さまざまなことに挑戦するのでは、どちらがよいのでしょうか。

私は、単純にどちらかが正しいとは思いません。

一つのことを続ける中でも、新しい知識や人との出会いが生まれるでしょう。

反対に、異なる分野の経験が、思いがけない形で結びつくこともあると思います。

ただし、だからといって、むやみやたらに何でも手を出せばよいとも思いません。

経験を増やすことそのものが目的になってしまえば、今取り組んでいることを十分に考えられなくなるかもしれません。

ジョブズがカリグラフィーを学んだのも、将来Macintoshに役立てるためではありませんでした。

興味があったからです。

未来のために何かを学ぶことも大切ですが、今、自分が興味を持っていることに向き合うことにも意味があるのではないでしょうか。

将来つながるかどうか分からない点を、今から無理につなげようとする必要はないのかもしれません。

7. 合理性と感情。お金や時間をどう使うのか

こうした考え方は、人生や仕事だけでなく、お金の使い方にもつながると思います。

例えば、将来の収入につながる資格の勉強と、純粋に興味のある趣味があったとします。

合理的に考えれば、収入につながる資格を優先した方がよいかもしれません。

しかし、だからといって、趣味にお金や時間を使うことが間違っているとは限りません。

その経験が将来別の形で役立つかもしれないし、何より今の自分にとって大切な時間になることもあるでしょう。

私は、多くの場合、合理性を重視して選択すると思います。

けれども、人間には感情があります。

必ずしも合理的に行動できるわけではありません。

そして、合理的に行動することだけが、人生の正解だとも思いません。

大切なのは、自分が何を重視しているのかを理解したうえで選ぶことではないでしょうか。

もちろん、使えるお金にも時間にも限りがあります。

将来何かにつながるかもしれないという理由だけで、何でも経験すればよいわけではないでしょう。

貯蓄や資産形成によって、将来の選択肢を増やすことも大切です。

一方で、将来のことばかりを考えて、現在の生活から楽しさを失ってしまうのも考えものです。

例えば、学びや経験にお金を使う場合でも、その金額が自分の生活にどの程度の影響を与えるのかを考える必要があります。

そのうえで、自分にとって価値があると思えることに使う。

私は、そのような姿勢を大切にしたいと思います。

未来のために合理的に備えることと、今の自分の感情を大切にすること。その両方が人生には必要なのではないでしょうか。

お金の使い方にも、すべての人に当てはまる唯一の正解があるわけではありません。

だからこそ、自分自身で考え、自分が納得できる選択をすることが大切なのだと思います。

8. 最後は、自分で考え、自分で選ぶ

ジョブズの「点と点は後からつながる」という言葉。

私は、この言葉が、未来を信じて何でも続ければよいと教えているわけではないと思います。

人生の選択が将来どのような結果につながるのか、今の私たちには分かりません。

正しいと思っていた選択が間違いだったと感じることもあれば、無意味だと思っていた経験が後から役立つこともあるでしょう。

だからこそ、自分で考えて選ぶことが大切なのだと思います。

自分で決めた目標に向かって、試行錯誤しながら努力する。

好きなことが辛くなったときは、一度、自分自身と向き合う。

以前はなぜ好きだったのか、今は何が辛いのかを考えてみる。

そして、続けるのか、やり方を変えるのか、それともやめるのか。

自分で判断する。

私は、人によって何を重視するかは違っていてよいと思います。

合理性を優先する人もいれば、感情を優先する人もいるでしょう。

どちらが正しいかを、他人が簡単に決められるものではありません。

自分で考え、自分で選んだのなら、その自分を信じて行動するしかないのではないでしょうか。

そして、途中で考えが変わってもよいと思います。

好きだったことが嫌いになることもある。嫌いだったことが好きになることもある。

私たち自身も、時間とともに変わっていくのですから。

未来のどこかで、今の経験が思いがけない形でつながるかもしれません。

そのつながりが見える日まで、今の自分と向き合いながら、一つひとつの選択を重ねていく。

私は、そんな生き方も悪くないと思います。

最後に、あなたにも一つ問いかけてみたいと思います。

今、続けていることは、本当に自分が続けたいことでしょうか。

そして、その答えを、最後に自分自身に問いかけたのはいつだったでしょうか。


あわせて読みたい|人生とお金を考える 第2回

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今回は、ジョブズの言葉から、自分の選択を信じること、続けることとやめること、そして自分自身と向き合う大切さについて考えました。

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未来の可能性を信じるジョブズと、避けるべき失敗を考えるマンガー。異なる視点を通して、自分に合った選択の仕方を考えてみてはいかがでしょうか。

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参考資料

本記事は、ジョブズ本人の講演を一次資料として、その発言をもとに人生・仕事・お金について筆者自身の考えを交えて考察したものです。

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