金価格が1グラムあたり2万円を突破したというニュースが大きく報じられた。テレビや新聞も一斉に取り上げ、世間の注目を集めている。年初からの上昇率は約35%、2023年8月から数えると2年で2倍になった。
一見するとおめでたい話題に映るが、この背後には通貨や国際金融システムを揺るがす大きな構造変化が潜んでいる。今回はその要因を整理しながら、今後の投資にどう向き合うべきかを考えてみたい。
金価格2万円突破の背景

金価格の上昇要因は複数存在する。
- ドルへの信認低下
米国の財政赤字はGDP比6%超に達し、ドルの価値を支える力が弱まっている。制裁によるドル資産凍結の影響もあり、BRICS諸国を中心にドル売り・金買いが進んでいる。 - 地政学リスクの高まり
世界各地で不安定要因が増え、安全資産としての金需要が高まっている。 - 各国中央銀行による大量購入
中央銀行はここ数年、年間1,000トンを超える規模で金を購入している。これは現物ベースでの需要増を意味し、需給面から価格を押し上げている。
通貨と金のこれから

通貨には「価値尺度」「交換手段」「価値保存」という3つの機能がある。しかし価値保存機能に関しては、円のように下落基調にある通貨では十分に果たせていない。ドルもまた、徐々にこの機能を失いつつある。
現在はドルが基軸通貨の地位を維持しているが、この体制が未来永劫続く保証はない。国際決済が多極化する可能性が高まる中、金の役割はむしろ強まっている。
投資家としてのスタンス
メディアで大きく取り上げられると、短期的な需要増で価格がさらに上がる局面があってもおかしくない。しかしニュースに反応して買った投資家は、わずかな下落で売ってしまい損失を出す可能性もある。
実際、金価格は一直線に上がり続けているわけではなく、上昇と下落を繰り返しながら長期的に値を切り上げてきた。この点を理解せずに飛びつくと、痛い目を見る投資家も出てくるだろう。
また、金価格が上昇しているということは、裏を返せば「円やドルといった通貨の相対的価値が下がっている」ということでもある。この視点を忘れてはいけない。
金はいつ購入すべきか
よく言われるのは「買おうと思った時が買い時」という考え方だ。確かに、価格が下がるのを待っていて買い場を逃すケースは多い。私自身も概ねこの意見に賛成だ。
一方で「少しでも安く買いたい」と思うのも自然だろう。金価格が下がる局面を考えると、ETFの売却が一因になる。機関投資家は四半期決算のタイミングで売ることが多く、3・6・9・12月に下落しやすい傾向がある。したがって、こうした時期を狙って分散的に購入するのも一つの方法だ。
ポートフォリオにおける金の位置づけ
金は「守りの資産」であり、一攫千金を狙うものではない。資産全体の中で10〜20%程度を組み込むのが望ましいとされる。
長期的には、通貨の信認低下や国際決済の多極化を背景に、金は重要なポートフォリオの一部であり続けるだろう。
まとめ
金価格の2万円突破は、単なる価格上昇のニュースに留まらない。
それは通貨の信頼低下、地政学リスク、中央銀行の行動といった大きな流れを反映している。
短期的な価格変動に振り回されず、長期的な資産保全の視点から淡々と金を組み込んでいくことが、これからの投資に必要な姿勢だと考えている。
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