スタグフレーションの足音──米国経済はどこまで耐えられるか?
インフレは落ち着きつつある。失業率も、まだ4%台だ。 だが、どこか妙な違和感が拭えない。──それが、私が4月末の経済指標を見たときに抱いた率直な感想だった。
「もう安心」とは、とても言えない。むしろ、“静かな危機”が忍び寄っているように思えたのだ。
インフレ鈍化、それでも油断できない理由
3月の米国CPI(消費者物価指数)は前年比+2.4%まで低下した。 表面的には順調だ。目標の2.0%に近づきつつある。
しかし、コアPCE(食品・エネルギーを除くインフレ率)は2.8%。 しかも、ここにきてやや再加速の兆しも見えている。
さらに、トランプ政権の関税強化が90日間猶予されているとはいえ、 その後に再び関税が発動されれば、輸入物価が押し上げられ、インフレが再燃するリスクもある。
インフレの火種は、まだ完全には消えていない──。
労働市場の裏に潜む“静かなひずみ”
失業率は4.2%。依然として歴史的に低い水準にある。 ぱっと見た印象では、「労働市場は堅調」と言いたくなる数字だ。
だが、その裏側では何が起きているだろうか?
たとえば、政府の支出削減政策(DOGE)による人員整理。 今は目立たないが、これが遅れて失業統計に現れる可能性がある。
また、関税による米国製造業の復活を期待する声もあるが、 これも現実には時間がかかる。逆に、関税負担で企業が投資を手控え、 雇用が増えないリスクも考えられる。
つまり、労働市場は見た目ほど盤石ではない──そんな不安がぬぐえないのだ。
企業決算に見る“経済の底力”
そんな中で、私は4月の企業決算に注目した。
意外にも、ハイテク大手を中心に好調な決算が相次いだ。 Google(Alphabet)は予想を上回る収益を発表し、 市場を明るく照らした。
これは、米国経済がまだ「壊れていない」証拠だと私は思う。 関税ショック、金利高、インフレ圧力……それら逆風にもかかわらず、 企業は粘り強く利益を確保している。
つまり、現時点では「利下げで無理やり景気刺激する」必要はないのではないか?
探偵パンダの仮説──今、焦って利下げすべきではない
私はこう考える。
確かに景気は減速傾向にある。GDP成長率も低下している。 しかし、だからといって焦って利下げに踏み切れば、
- インフレ再燃のリスクが高まる
- 金融政策の信頼が揺らぐ
- 将来の本当の危機に備える手段を失う
といった、取り返しのつかない副作用を招く恐れがある。
ましてや、企業収益が底堅い今の段階では、 「待つ」という選択肢も十分に合理的だ。
市場や政権の圧力に屈せず、FRBは慎重に、冷静に、 インフレと景気のバランスを見極めるべきだと私は思う。
まとめ──静かな危機に備えよ
数字だけを見れば、今の米国経済は悪くない。
しかし、その裏には確実にひずみが生まれ始めている。 景気減速の予兆。インフレ再燃リスク。労働市場の見えない傷。
だからこそ、今は焦るべきではない。 むしろ、静かに、冷静に、次の局面に備えるべきだろう。
「本当の危機」は、いつも静かに忍び寄る。 それに気づけるかどうか──それが、投資家の運命を分けるのだ。
※この記事は、探偵パンダによる“ひとつの仮説”にすぎません。投資の正解は誰にもわかりません。一緒に「考える」時間を楽しんでいただければ嬉しいです。
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