長期投資は「前提」を選ぶ行為

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──タルムードに語られる、エイブラハムとイサクの試練から考える


投資の世界で起きる「前提が揺らぐ瞬間」

長期投資をしていると、
ときどきこんな疑問が頭をよぎります。

  • 本当に、このまま積み立て続けて意味があるのか
  • 株式市場は、これからも成長し続けるのか
  • 資本主義という仕組みは、今後も維持されるのか

短期的に見れば、
相場は何度も下落し、停滞し、混乱します。

それでも多くの長期投資家は、
日々の値動きに一喜一憂せず、
積立を続けています。

冷静に考えると、これは不思議な行動です。
なぜなら長期投資は、
完全な確証が存在しない戦略だからです。(ただし100年以上の実績はある)

それでも私たちは、

  • 株価は長期では成長する
  • 資本主義経済は今後も続く

という前提を置き、
その前提の上で投資行動を選び続けています。

この「前提を置く」という行為そのものが、
今回のテーマです。


タルムードに語られる、エイブラハムとイサクの試練

タルムードには、
族長 エイブラハム
その息子 イサク にまつわる
試練の物語が語られています。

エイブラハムとサラのもとには、
イサクという男の子がいました。

イサクが十歳から十一歳ほどに成長したころ、
神はエイブラハムに語りかけます。

「エイブラハムよ。
お前の最愛の息子イサクを連れて山に登れ。
そしてイサクを木の幹に縛りつけ、
その下に枯れ木を敷き詰めよ」

神を心から信じていたエイブラハムは、
その言葉に疑いを挟むことなく、
イサクを連れて山へと向かいました。

その様子を見ていたサラは、
理由のわからない不安に襲われます。

エイブラハムは神に何を命じられたのか。
もしかすると、取り返しのつかないことを
求められているのではないか。

母親としての直感が働き、
サラは顔を青ざめさせ、
強い不安に包まれました。

しかし、その不安をよそに、
エイブラハムは神に命じられた通りの準備を進めます。

イサクを木に縛りつけ、
その下に枯れ木を敷き詰めました。

すると神は、さらに告げます。

「枯れ木に火をつけよ。
そして、お前の持っているナイフを、
その息子に向かって振り下ろせ」

エイブラハムは、
その命令にも一切の疑いを抱かず、
ナイフを手に取り、
まさに今、振り下ろそうとしました。

その瞬間、神の声が響きます。

「やめよ。
それ以上、ナイフを動かしてはならない。
お前の信仰心と忠誠心は、今、十分に示された」

神はエイブラハムに、
イサクの代わりに羊を生贄として捧げるよう告げました。

こうしてイサクは救われ、
エイブラハムは羊を捧げることで、
この試練は終わりを迎えます。

この寓話が試しているのは「判断」ではない

この物語は、
投資の意思決定モデルとして読むと、
正直なところ相性は良くありません。

  • 分析はない
  • 比較検討もない
  • 判断の修正もない

つまりこれは、

「どう判断したか」

を評価する話ではありません。

この試練が可視化しているのは、

エイブラハムは、
何を“絶対的な前提”として生きているのか

という一点です。

極端な状況に追い込まれたとき、
人は思考や技術ではなく、前提そのもので行動します。

この寓話は、
その前提をむき出しにするための物語です。


投資における「神への忠誠心」をどう読むか

ここで視点を変えます。

この話に出てくる
「神への忠誠心」を、
そのまま投資に当てはめるのは危険です。

投資は宗教ではありませんし、
盲目的な信仰はむしろリスクになります。

しかし構造として見ると、
対応するものは確かに存在します。

それが、

長期投資が成立するために、私たちが信じるべき絶対条件です。

具体的には、

  • 株式市場は短期的には揺れるが、長期的には成長してきた
  • 資本主義経済は、形を変えながらも今後も続いていく

という考え方です。

この前提を信じられないのであれば、
長期投資という戦略自体が成立しません。

重要なのは、
これは「必ずそうなると信じろ」というわけではない、という点です。

正確には、

この前提を採用しない限り、長期投資という行動は合理的な行動にならない

という、
戦略上の前提に近いものです。


株式市場は短期的に揺れながら、長期的に成長してきた

短期では“常に”不安定だった

まず前提として、
株式市場が不安定でなかった時代は一度もありません。

代表的な下落局面だけを並べても、

  • 1929年:世界恐慌(−80%超)
  • 1970年代:スタグフレーション
  • 1987年:ブラックマンデー(1日で−20%超)
  • 2000年:ITバブル崩壊
  • 2008年:リーマンショック
  • 2020年:コロナショック
  • 2022年:インフレ・利上げ局面

どの時代にも
「今回はもう終わりだ」「資本主義は崩壊する」
という言葉が実際に使われてきました。


それでも長期では成長してきた事実

一方で、長期の数字を見ると全く違う景色が見えます。

例として、米国株式市場(S&P500)を見てみます。

  • 1926年〜2023年
    年率リターン:約10%前後(配当込み)
  • インフレ調整後でも
    実質リターン:約6〜7%

これは、

  • 世界恐慌
  • 世界大戦
  • 冷戦
  • オイルショック
  • 金本位制崩壊
  • IT革命
  • 金融危機
  • パンデミック

すべてを含んだ上での数字です。

つまり、

株式市場は
「危機を避けて成長した」のではなく、危機を内包しながら成長してきた

ということになります。


市場は「戻った」のではなく「更新してきた」

もう一つ重要なのは、
市場は単に“元に戻った”のではありません。

  • 下落 → 回復 → 過去最高値を更新
  • その後また下落 → 回復 → さらに更新

というプロセスを、
100年近く繰り返しています。

これは、

  • 生産性の向上
  • 技術革新
  • 企業の新陳代謝
  • 利益の再投資

といった
資本主義の構造そのものが働いた結果です。


資本主義経済とは何か

資本主義経済とは、
資本を投じて価値を生み、その成果を再び投資に回す仕組みです。

個人や企業が財産を持ち、
利益を得ることが認められている点が大きな特徴です。

価格は国家ではなく市場によって決まり、需要と供給を通じて
「何が必要とされているか」が可視化されます。

そして得られた利益は、

  • 設備投資
  • 技術開発
  • 人材育成

といった形で再投資され、
経済全体の生産性を高めてきました。

この循環構造があるため、
資本主義は長期的に成長しやすい性質を持っています。


資本主義経済は「形を変えながら」続いてきた

もっとも、資本主義は万能ではありません。

格差の拡大やバブル、環境問題など、
多くの歪みも生んできました。

しかし重要なのは、
それらの問題が起きるたびに、

  • 規制
  • 税制
  • 金融政策

といった形で修正が加えられてきた点です。

資本主義は固定された完成形ではなく、
危機に直面するたびに姿を変えながら存続してきた制度だと言えます。

資本主義は「固定された制度」ではない

資本主義という言葉から、

  • 自由放任
  • 株主至上主義
  • 格差拡大

を連想する人も多いとおもいますが、
実際の資本主義は何度も姿を変えています

例を挙げると、

  • 19世紀:産業資本主義
  • 20世紀前半:国家介入型資本主義
  • 戦後:福祉国家モデル
  • 1980年代〜:新自由主義
  • 現在:規制と市場のハイブリッド

形は変わっても、
「資本を投じ、価値を生み、再投資する」構造は維持されてきました。


「崩壊」は何度も語られてきた

興味深いのは、

  • 世界恐慌
  • 冷戦
  • リーマンショック

のたびに、
「資本主義の終わり」が本気で議論されてきたことです。

しかし実際には、

  • ルールを変え
  • 規制を加え
  • 通貨制度を修正し

ながら、
資本主義は現在も存在し続けています


それでも「信じる」ことには覚悟がいる

ここで重要なのは、

株式市場は必ず上がる、資本主義は絶対に正しい

という宗教的信仰ではありません。

事実として言えるのは、

  • これまでの100年以上成長してきたという実績がある
  • しかし将来も必ず同じとは限らない
  • それでも、多くの投資家は「この前提に賭ける」選択をしている

という点です。


まとめ──長期投資は「前提」を選ぶ行為

まとめ──長期投資は「前提」を選ぶ行為

長期投資とは、日々の値動きを正確に予測することではありません。

また、
不安を感じない状態を目指すことでもありません。

本質は、
どの前提の上に資産形成を委ねるかを選ぶ行為です。

多くの長期投資家が採用している前提は、次のようなものです。

  • 株式市場は短期的には大きく揺れる
  • しかし長期的には、成長を積み重ねてきた
  • 資本主義経済は、危機のたびに修正されながら存続してきた

これらは「保証」ではありません。
あくまで、過去の実績と構造に基づくものです。

それでも長期投資を選ぶということは、
この前提を不安な局面でも簡単には裏切らない
という覚悟を持つことでもあります。

相場が荒れたときに感じる不安は、誰にでも生じます。
問題は、不安そのものではなく、

  • その不安によって前提を放棄してしまうこと
  • 短期的な出来事で、長期の判断を覆してしまうこと

です。

長期投資とは、
「未来を信じ切る行為」ではありません。

不確実性を受け入れたうえで、
それでも採用すると決めた前提(株価は右肩上がりに上がる、資本主義経済は続く)を持ち続ける行為

と言ったほうが正確でしょう。

この意味で、
長期投資はテクニックではなく、思想や姿勢に近い選択だと言えます。

そしてその選択を、
どの局面でも一貫して守れるかどうかが、
結果を大きく左右していくのです。


シリーズ第1回
ソロモン王と雀の寓話をもとに、
投資における「目立つこと」や「分不相応な成功」のリスクを考察しました。

シリーズ第2回
多数派が信じるものは、本当に価値があるのか――。
タルムードに語られるエイブラハムの寓話を手がかりに、「見える安心」と「見えない価値」の違いを投資の視点で掘り下げました。

シリーズ第3回
相場の不安が高まったとき、人はなぜルールを破ってしまうのか。
タルムードの「黄金の子牛」の寓話を通して、不安が判断を侵食し、静かに投資を壊していく構造を読み解きます。

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