投資の世界では「リスク」という言葉が頻繁に使われます。
しかし、リスクとは本当に何を意味しているのでしょうか。
価格が下がることなのか。
損失を出すことなのか。
それとも、もっと別の何かなのか。
タルムードの寓話には、嵐を乗り越えた三人の乗客が、それぞれ異なる選択をした物語があります。
彼らの判断は、最終的に大きく異なる結末を迎えました。
本記事では、この寓話を通して、
「リスクとは何か」
「リスクをどうコントロールするのか」
を長期投資の視点から考えていきます。
投資におけるリスクの誤解
投資の世界では、「リスク」という言葉が頻繁に使われます。
一般的には、価格の上下動、つまりボラティリティを指して「リスクが高い」「リスクが低い」と表現されることが多いでしょう。
しかし、本当にリスクとは価格の変動そのものなのでしょうか。
私自身は、リスクを「価格の揺れ」ではなく、
実際に損失を確定してしまうこと
そして、
長期投資を続けられなくなる状況に追い込まれること
だと考えています。
長期投資を前提とする場合、短期的な上下動は避けられません。
むしろ市場の自然な動きの一部とも言えます。
問題は、その変動によって、
想定していなかったタイミングで資産を売却してしまうこと
積立を継続できなくなること
感情的な判断によって長期戦略を崩してしまうこと
ではないでしょうか。
つまり、本当のリスクとは「価格が動くこと」ではなく、
自分の投資計画が崩れてしまうこと
なのかもしれません。
この視点から見ると、行動の問題とも深く関係しています。
タルムードの寓話もまた、極端な選択がどのような結果を生むのかを通して、リスクの本質を考えさせてくれるものです。
タルムード寓話(三人の乗客)

タルムードの寓話は、答えを教える物語ではなく、「考えるための物語」と言われています。
今回紹介するのは、三人の乗客が異なる選択をしたことで、まったく違う結果を迎えるという話です。
投資においても、リスクへの向き合い方や判断の違いが、長期的な結果を大きく変えることがあります。
それでは、物語を見ていきましょう。
難破船に乗った3人の乗客
ある時、一隻の船が航海の途中で大きな嵐に遭遇しました。
船は激しく損傷し、ついに難破してしまいます。
運よく近くの島に流れ着いた乗客たちは、その島で船を修理し、再び出航することになりました。
島にはフルーツが豊富に実っていました。
乗客は三人。
彼らは嵐を乗り越え、長い間食べ物を口にしていなかったため、空腹に苦しんでいました。

一人目の乗客は、船がいつ出航するかわからないことを恐れ、船の中で待ち続けることを選びました。取り残されることを避けるため、空腹を我慢する道を選んだのです。
二人目の乗客は、船が見える範囲で少量のフルーツを食べ、すぐに戻るという判断をしました。必要な分だけ補給し、船の動きを常に確認しながら行動しました。
三人目の乗客は、船の修理にはまだ時間がかかるだろうと考え、島の奥まで入り込み、フルーツをたらふく食べることを選びました。船が見えない場所まで進み、空腹を満たすことを優先したのです。
やがて結果は大きく分かれました。

三人目は船の出航に気づかず、島に取り残されてしまいました。
一人目は空腹に耐えきれず、力尽きてしまいます。
そして、二人目の乗客だけが生き残ることができました。
寓話の本質
この寓話は、「バランスを取った二人目だけが生き残った」という、非常に分かりやすい構造になっています。
必要な分だけ行動し、過剰にも過少にもならない。
一見すると、「バランスこそが正解」と言いたくなる物語です。
しかし、現実の世界は、必ずしもこれほど単純ではありません。
バランスは万能ではない
現実には、大きなリスクを取った人だけが到達できる場所も存在します。
歴史を見ても、強い意志で大胆な選択をした人が、大きな成果を生み出してきた例は数多くあります。
つまり、
バランスを取ることが常に最適解とは限らない。
という事実も忘れてはいけないと思います。
慎重さを重視するあまり、機会そのものを逃してしまうこともあります。
リスクを取るべき局面は存在する
人生全体という大きな視点で考えると、
リスクを避け続けること自体がリスクになるという場面もあります。
新しい挑戦
環境の変化
大きな決断
こうした局面では、ある程度のリスクを受け入れて行動しなければ、前に進めないこともあります。
現状維持は安全に見えますが、長期的には衰退と同じ意味を持つこともある。
これは、私自身が強く感じている点です。
本当に避けるべきものは何か
では、この寓話から学べる本質は何でしょうか。
それは、「リスクを取るな」ということではありません。
本当に避けるべきなのは、
立ち直れないほどの失敗です。
三人目の乗客は、空腹を満たすことを優先しすぎた結果、帰る手段そのものを失いました。
一人目の乗客は、安全を重視しすぎた結果、行動せずに力尽きました。
どちらも極端な選択です。
重要なのは、
挑戦する余地を残しながら、生き残れる範囲でリスクを取ること。
何もしないことが最大のリスク
そしてもう一つ。
私の中で最も大きな失敗は、「何もしないこと」です。
もちろん、投資の世界では「何もしない」という判断が正解になることもあります。
しかし人生という広い視点で見れば、
行動しないことは、ゆっくりと後退していくことと同じ。
この寓話は、単なる「安全第一」の物語ではなく、
極端を避けながらも、行動し続けることの重要性を示しているのかもしれません。
寓話と投資の関係 ― 「リスク」という視点から読み解く

ここまで紹介してきた寓話は、一見すると単純な教訓の物語のように見えます。
三人の乗客は、それぞれ異なる選択をしました。
- 行動せず安全を優先した者
- バランスを取りながら行動した者
- 欲望に従い過剰に行動した者
そして結果は大きく分かれます。
この構図は、投資の世界にもよく似ています。
投資家もまた、
- 極端にリスクを避ける人
- 適度なリスクを取る人
- 過剰なリスクを取る人
というように、大きく異なる行動を取ります。
しかし重要なのは、この寓話が単純に「真ん中が正解」と言っているわけではないという点です。
現実の投資はもっと複雑です。
- 市場環境
- 個人の資産状況
- 時間軸
- 心理状態
これらによって、同じ行動でも結果は変わります。
だからこそ、この寓話を投資に当てはめる場合、
「どの選択が正しいか」
ではなく、何が市場から退場を生むか
という視点が重要になります。
リスクの本質(ハワード・マークスの視点)

投資の世界では、「リスク」という言葉が頻繁に使われます。
一般的には、
価格変動の大きさ(ボラティリティ)
として説明されることが多いでしょう。
しかし、ハワード・マークス氏の考え方に触れて以来、私はリスクをもう少し違った視点で捉えるようになりました。
リスクは悪ではない
まず重要なのは、
リスクそのものは悪ではないという点です。
リスクを取らなければ、リターンを得ることもできません。
問題は、
自分がどれだけのリスクを取っているのか理解していないことです。
人は本能的にリスクを最小化したがります。
しかし投資では、自分のリスク許容度を理解し、
取るべきリスクと避けるべきリスクを区別する必要があります。
リスクとは不確実性である
リスクが高いということは、未来が不確実である
という意味です。
もし高リスク資産が確実に高いリターンを生むなら、
それはもはやリスクとは呼べません。
本当のリスクとは、大きな利益と同時に、大きな損失の可能性も存在する状態です。
長期投資家にとっての本当のリスク
では、長期投資家にとってのリスクとは何でしょうか。
私はそれを、
積立を継続できなくなる状況
だと考えています。
たとえば、
- 大きな下落で恐怖から売却してしまう
- 資金需要によって意図せず資産を手放す
- 想定外の出来事で長期戦略を維持できなくなる
こうした状況は、単なる価格変動よりも深刻です。
長期投資において一時的な下落は、本来リスクではありません。
むしろ買い場になることもあります。
しかし、
市場から退場してしまうことこれは最大のリスクと言えるかもしれません。
投資は人気投票でもある

市場は合理的に見えて、
実際には人気投票の側面を持っています。
多くの人が熱狂している資産ほど、期待が価格に織り込まれている可能性があります。
最も危険なのは人気の絶頂で買うこと、
最も安全なのは誰も欲しがらないときに買うこと
である場合もあります。
ただし、前提は重要です。
それは、
本質的な価値が存在する資産であることです。
バリュエーションをどう考えるか ― 長期投資家の視点
長期投資では、タイミングを読む必要はないと言われることがあります。
実際、投資初心者にとっては、相場環境を過度に意識せず、淡々と積立を続けることが合理的な場合も多いでしょう。
しかし、少し投資経験を重ねていくと、
- 現在の市場環境
- 評価水準(PERなど)
- 期待リターン
といった視点を持つことも自然な流れかもしれません。
たとえば、現在のS&P500は歴史的平均と比較すると、割高感を指摘される局面もあります。
もちろん、割高に見える状態が長期間続くこともあり、単純な判断はできません。
ただし一つの考え方として、
積立そのものを止めるのではなく、
ポートフォリオ全体に占める割合を調整する
投資金額を微調整する
といった方法もあります。
これは未来を予測するためではなく、
リスク許容度を管理するための行動です。
重要なのは、短期的な価格予想ではなく、
自分がどれだけのリスクを取っているかを理解すること
なのかもしれません。
現在の市場評価 ― Shiller CAPEから見るリスク
長期的な視点で市場を評価する指標の一つに、Shiller CAPE Ratio(シラーPER)があります。
これは景気循環の影響を平準化した利益を基に算出されるため、単年PERよりも長期的な評価水準を把握する際に参考になります。
以下の図を見ると、現在の米国株市場は歴史的平均と比較して高い水準に位置していることが分かります。

ただし重要なのは、「割高=必ず下落する」という意味ではない点です。
市場は長期間割高に見える状態が続くこともあります。
しかし評価水準が高い局面では、
- 将来リターンの期待値
- ボラティリティの増加
- 資金流動の変化
といったリスク要因を意識する必要があります。
そのため私は、積立そのものを止めるのではなく、
ポートフォリオの比率調整という形でリスク管理を考えています。
リスクコントロール
リスクは未来にしか存在しません。
そして未来を正確に予測することは不可能です。
私たちは過去のデータやパターンを参考にしますが、
未来が過去の延長線上にあるとは限りません。
だからこそ、リスクを完全に排除することはできません。
重要なのは、
リスクを理解し、管理することです。
リスクは定量化しきれない
リスクは単純な数字では表せません。
- 本質的価値の安定性
- 市場価格と本質価値の乖離
- 心理的な過熱
これらは定量化が難しい要素です。
シャープレシオなどの指標は参考になりますが、
それだけでリスクを完全に評価できるわけではありません。
リスクは下落局面で姿を現す
上昇相場では、リスクの差は見えにくいものです。
むしろ、
下落局面になって初めて本当のリスク管理の差が現れます。
しかし下落相場は短いため、人はその重要性を軽視しがちです。
私たちにできるリスクコントロール
完全な安全は存在しません。
それでもできることはあります。
- ポートフォリオの分散
- 過度な集中を避けること
- 購入タイミングの分散(ドルコスト平均法)
- 感情に左右されない行動ルール
これらは派手ではありません。
しかし長期的に生き残るための基盤になります。
投資の成功とは、
常に最大の利益を狙うことではなく、
生き残り続けることなのかもしれません。
探偵パンダの現在地
ここまで、タルムード寓話を通じてリスクについて考えてきました。
最後に、理論ではなく、私自身が今どのようなリスクを意識しているのかを書いてみたいと思います。
これは投資判断の正解ではありません。
あくまで「現時点での私の思考」です。
■ 米国市場への集中リスク
過去10年を振り返ると、米国株に投資していれば成果を得やすい時代だったと言えるかもしれません。
特にS&P500や米国大型グロース株は、多くの投資家にとって成功体験となりました。
しかし、
過去が成功だったからといって、未来も同じとは限りません。
現在の評価水準(PERなど)を見ると、割高感を指摘する声もあり、
資金の流れが他国へ移動する可能性も考えています。
そのため私は、2026年から米国への新規投資比率を少し下げ、
日本を含む他地域への投資を増やすことを意識しています。
これは市場を予測するためではなく、
ポートフォリオ全体のリスクを調整するための行動です。
■ ドルの信認と金(ゴールド)の役割
米国は依然として世界の中心的な経済圏であり、
基軸通貨としてのドルが短期間で他通貨に置き換わるとは考えていません。
ただし、
財政問題や債務拡大などの長期的な課題を考えると、
ドルの絶対的な信認が徐々に揺らぐ可能性はあると感じています。
歴史的に見ると、こうした局面では金(ゴールド)が評価されることもありました。
実際、現在も金価格は上昇トレンドを示しており、

上記グラフは、長期的に見た「金(GOLD)」と「S&P500」の優位性の移り変わりを示したイメージです。
市場ではしばしば「最も強い資産」が存在しているように見えますが、歴史を振り返ると、実際には資産ごとの優位性は周期的に入れ替わってきました。
1970年代のインフレ局面では金が強く、
その後の長期成長期では株式が優位となり、
ITバブル崩壊や金融危機後には再び金が評価される場面もありました。
重要なのは、「どちらが常に正しいか」ではありません。
市場環境が変化する中で、資金の流れや評価される資産が移り変わるという事実です。
現在は株式(特に米国株)が長期的に強い期間を経験してきましたが、将来も同じ構造が続くとは限りません。
だからこそ私は、ドルの信認や財政問題などの長期的な視点を踏まえ、ポートフォリオの一部として金を保有することの意味を考えています。
ビットコインという「持たざるリスク」

これまでブログではビットコインの保有についてあまり触れてきませんでした。
しかし実際には、ごく少量ではありますが保有しています。
正直なところ、
- ビットコインが本当に安全なのか
- 将来的にどのような役割を持つのか
明確な答えは持っていません。
デジタルゴールドと呼ばれることもありますが、
値動きはむしろ株式市場に近い側面もあり、
リスク資産としての性質も感じています。
それでも保有している理由は、
「持たざるリスク」
を意識しているからです。
もし将来、大きな資産として確立された場合、
まったく保有していないことによる機会損失は大きいかもしれません。
ただし重要なのは、
ポートフォリオのごく一部にとどめていることです。
最悪ゼロになっても生活や長期投資計画に影響しない範囲。
これは明確な理論ではなく、現時点では感覚的な判断でもあります。
分からないことを認める

最後に、
私は未来を予測できるとは思っていません。
米国優位は続くのか。
AIへの期待はどこまで織り込まれているのか。
ビットコインはどこへ向かうのか。
どれも確実な答えはありません。
だからこそ、
未来を当てようとするのではなく、
どんな未来でも生き残れるように考える。
それが、私なりのリスクとの向き合い方です。
つまり、「リスクとは未来の不確実性そのものではなく、その不確実性に対して自分がどのように壊れてしまうか、という問題なのかもしれません。」
まとめ ― リスクと向き合うということ
今回の寓話では、三人の乗客がそれぞれ異なる選択をしました。
何もしない者。
過剰に行動する者。
そして状況を見ながら行動する者。
物語ではバランスを取った人物が生き残りましたが、現実の投資はそれほど単純ではありません。時には大胆なリスクが成功につながることもあります。
それでも長期投資において重要なのは、
リスクを避けることではなく、
リスクを理解し、コントロールすること
ではないでしょうか。
未来を正確に予測することはできません。
だからこそ、どんな未来でも投資を続けられる状態を保つこと。
市場から退場しないこと。
それが長期投資における最大のリスク管理なのかもしれません。
タルムードの寓話は、答えを教えるものではなく、問いを残します。
もし同じ状況に置かれたなら、あなたはどの選択をしますか。

シリーズ第1回
ソロモン王と雀の寓話をもとに、
投資における「目立つこと」や「分不相応な成功」のリスクを考察しました。
シリーズ第2回
多数派が信じるものは、本当に価値があるのか――。
タルムードに語られるエイブラハムの寓話を手がかりに、「見える安心」と「見えない価値」の違いを投資の視点で掘り下げました。
シリーズ第3回
相場の不安が高まったとき、人はなぜルールを破ってしまうのか。
タルムードの「黄金の子牛」の寓話を通して、不安が判断を侵食し、静かに投資を壊していく構造を読み解きます。
シリーズ第4回
短期的な不安定さを抱える株式市場や資本主義の歴史を俯瞰しながら、「どの前提の上で投資行動を選び続けるのか」という本質的な問いに向き合う内容です。投資判断を迷ったときに必要な、思想としての長期投資の核心が整理されています。
シリーズ第5回
タルムードの寓話をもとに、ナラティブ(物語)が市場に与える影響について考察しました。市場は必ずしも合理的に動くわけではなく、AIブームのようなストーリーが投資判断や価格形成にどのように作用するのかを解説しています。
シリーズ第6回
安全な道を選ぶという寓話を通して、長期投資における意思決定の本質を考察しました。近道や短期的な利益に惹かれる心理と、それがリスクにつながる構造を解説。投資判断と人間心理の関係を、タルムードの知恵から読み解いた回です。
■ 毎月の投資レポートも公開しています
当ブログでは、実際の投資結果にもとづくリアルな運用レポートを毎月更新しています。
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投資信託・株式・ゴールドなど各資産のリターン
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スポット買い(5%ルール)の実践データ
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翌月に向けた投資戦略と市場環境の考察
など、初心者〜中級者の方が参考にしやすい“等身大の資産形成記録”を発信中です。
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