この問いは、ここ数年で何度も繰り返されてきた。
だが正直に言えば、この問い自体が少しズレている。
為替は「どこまで行くか」を当てる対象ではなく、「なぜその方向に圧力がかかり続けているのか」を理解する対象だからだ。
為替の話になると、多くの場合は日米金利差が語られる。
もちろん間違いではない。ただし、それは表層の話だ。
本質は名目金利ではなく、実質金利にある。
日本は利上げに踏み切った。
だが、インフレ率を差し引いた実質金利で見れば、ほぼ横ばい、あるいは依然としてマイナス圏だ。一方で米国は、高金利を維持したままインフレが沈静化し、実質金利は明確にプラス圏にある。
この状態で、円が買われる理由はほとんどない。
円は「持つ通貨」ではなく、「調達される通貨」であり続けている。
ここで重要なのは、これは投機ではなく、合理的な資本行動だという点だ。
金利が低く、変動も小さい通貨で借り、高金利・高成長が期待できる場所へ資金を移す。
それが円キャリートレードであり、日本の金融政策が長年かけて作り上げた構造でもある。
この構造が続く限り、円安は「止まらない」のではなく、「止まる理由がない」。
ただし、ここで一つ誤解してはいけない。
構造的に円安だからといって、円高が起きないわけではない。
むしろ、円高は突然、そして急激に起きる。
それはリスクオフの局面だ。
世界的な景気後退、金融不安、株式市場の急落。
こうした場面では、キャリートレードが一斉に巻き戻される。
リスク資産は売られ、借りていた円が買い戻される。
結果として、株安と円高が同時に進む。
投資家にとって最も厳しいのは、この局面だ。
外国株が下落し、為替でも損をする。
いわゆる「ダブルパンチ」である。
たとえば、外国株が20%下落し、同時に為替が20%円高に進めば、円建ての資産価値は理論上36%も減少する。
これは珍しい話ではない。過去の危機局面では何度も起きてきた。
だから、「円安対策として外貨資産を持つ」という発想だけでは不十分だ。
さらにややこしいのは、円が構造的に弱くなっている理由が、貿易だけでは説明できなくなっている点だ。
エネルギー輸入に加え、ITサービス、クラウド、広告、ソフトウェアといった「デジタル赤字」が恒常化している。
これは、日本が成長分野に投資すればするほど、海外への支払いが増える構造でもある。
かつてのように、景気が良くなれば円高になる、という単純な関係は成り立たない。
金融政策もまた、為替に影を落としている。
問題は、政策の内容よりも、政策の自由度だ。
利上げをすれば、国債の利払いが財政を圧迫する。
利上げを控えれば、円安圧力が続く。
この制約が市場に見透かされている以上、円は「強い通貨」として扱われにくい。
では、投資家はどうすればいいのか。
答えはシンプルだ。
為替を予測しないこと。
その代わり、為替に耐える構造を作ることだ。
通貨を一つに偏らせない。
資産クラスを分散する。
時間を分散し、積立を基本にする。
そして、円安でも円高でも、致命傷を負わない形を維持する。
為替は敵ではなくただの環境だ。
当てにいくものではなく、前提として受け入れるもの。
不安定な時代に必要なのは、正しい予想ではない。
耐えられる構造を作ること。
それだけは、はっきりしている。
■ 毎月の投資レポートも公開しています
当ブログでは、実際の投資結果にもとづくリアルな運用レポートを毎月更新しています。
-
投資信託・株式・ゴールドなど各資産のリターン
-
スポット買い(5%ルール)の実践データ
-
翌月に向けた投資戦略と市場環境の考察
など、初心者〜中級者の方が参考にしやすい“等身大の資産形成記録”を発信中です。
資産形成のヒントを得たい方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。
👉 2025年11月の投資成績と戦略
👉 2025年10月の投資成績と戦略
👉 2025年9月の投資成績と戦略
👉 2025年8月の投資成績と戦略
👉 2025年7月の投資成績と戦略
当ブログのスタンスと免責事項
本記事は、最新の経済動向や各種データをもとにした一個人による考察であり、特定の投資商品・売買行動を推奨するものではありません。
投資にはリスクが伴います。最終的な判断はご自身の責任にてお願いいたします。
免責事項についてはこちらをご覧ください → [免責事項]


コメント