― AI・分断・インフレの時代に、個人投資家はどう向き合うべきか ―
AIはバブルなのか。
世界経済は再び分断へ向かっているのか。
インフレはもう終わったのか。
JPモルガンの「Outlook 2026」は、こうした問いに対して
どちらか一方に振り切ることなく、極めて現実的な視点を提示しています。
楽観すべき材料は確かにある。
しかし同時に、構造的なリスクも確実に積み上がっている。
本記事では、JPモルガンの2026年アウトルックを軸にしながら、
「バブル」「分散」「金(ゴールド)」という視点とも結びつけて、
今後の投資との向き合い方を整理してみたいと思います。
1. 2026年のマクロ環境|FRB利下げと市場の前提
JPモルガンは、2026年に向けた世界経済の前提として、
- FRBは利下げサイクルに入っている
- 米国短期金利の低下が、世界のリスク資産を押し上げる
としています。
短期金利の低下は、株式やクレジット市場にとっては追い風です。
一方で、長期金利は急低下でも急上昇でもなく、「レンジ内での推移」が想定されています。
これは、
- 市場が楽観一色ではない
- かといって悲観に傾いているわけでもない
という、非常に中間的な環境です。
2. AIはバブルなのか?|JPモルガンの基本スタンス
AIについて、JPモルガンは明確な立場を取っています。
「AI投資は過熱しているが、今すぐ崩壊するバブルではない」
この見解は、感覚的な楽観ではなく、
過去のバブルとの比較によって裏付けられています。
3. なぜ今は崩れないのか|過去のバブルとの違い
歴史的なバブルには、ある共通点がありました。
- 鉄道バブル
- 光ファイバーバブル
- ITバブル
いずれも、
需要をはるかに上回る「過剰生産能力」が先に作られていました。
しかし現在のAI分野では、状況はむしろ逆。
- データセンターの空室率は過去最低水準
- 建設中のデータセンターはほぼ事前にリース済み
- GPU・電力・部品は全体的に供給不足
つまり、
供給が足りていない状態にあります。
さらに重要なのは、
- 大手テック企業の設備投資はキャッシュフローによって支えられている
という点です。
この構造は、
「借金と期待だけで膨らんだ過去の崩壊型バブル」とは明確に異なります。
4. AI投資はまだ「序盤」|GDPとの比較
JPモルガンは、AI投資を歴史的な技術革新と比較しています。
- 現在のAI投資規模:GDPの約1%
- 過去の汎用技術(電気・鉄道・通信):ピーク時2〜5%
この比較から分かるのは、
AI投資は、歴史的に見ればまだ初期段階
という点です。
今後、AI関連投資がさらに拡大しても、それ自体は「異常」とは言えないかもしれません。
5. バブルとは何か|「期待」そのものが膨らむ現象

ここで一度、
「そもそもバブルとは何なのか」を整理しておきたいと思います。

バブルとは「価格が上がっている状態」ではなく
「価格が上がり続けると信じる参加者が増え続ける状態」
バブルの本質は、自己達成的な期待にあります。
- 値上がりするから買う
- 皆が買うから安心する
- 安心感がさらに参加者を呼ぶ
この循環が、
ファンダメンタルズ以上に価格を押し上げていきます。
JPモルガンも、バブルの特徴として、
- 金融構造の拡大
- レバレッジの増加
- 引受基準の劣化
を挙げています。
重要なのは「今どこにいるのか」
JPモルガンの評価
- バブルの要素はすでに存在する
- しかし、ピークには達していない
- むしろ「これからバブル化するリスク」の方が大きい
これは、
「今すぐ逃げる局面ではないが、無警戒でいいわけでもない」
という、判断だと感じます。
6. AI拡大の制約条件|電力と資源という現実

AIはソフトウェアの話に見えがちですが、
現実には物理的な制約に強く依存しています。
JPモルガンが特に強調しているのが、
- 電力
- エネルギー
- 資源
です。
- データセンターは大量の電力を消費
- 米国では送電網の老朽化が進行
- 新規電源の追加には時間がかかる
この構造は、
AI需要が進むほど、エネルギー・資源の重要性が増すことを意味します。
7. ドルと金(ゴールド)|価値保存の視点

JPモルガンは、ドルについて次のように述べています。
- ドルは今後も基軸通貨であり続ける
- ただし、各国はドル依存を徐々に下げている
特に大きな転換点となったのが、
- ロシア資産(約3000億ドル)の凍結
これをきっかけに、
各国中央銀行は記録的なペースで金(ゴールド)を購入しています。
金は、
「短期で大きく儲ける資産」ではありません。
しかし、
通貨価値が揺らぐ時代に、何を価値保存の軸にするのか
という問いに対する、答えとして金(ゴールド)は一つ選択肢となります
8. 日本の財政赤字
JPモルガンのアウトルックの中では、
日本の財政状況についても触れられています。
日本は現在、
G7諸国の中で、唯一、パンデミック以前より財政赤字を縮小している国
と言及しています。
これは将来世代への備えという観点では評価できる一方で、
国民生活とのバランスという点では、別途考えるべき課題も含んでいると思います。
9. バブルはいつ崩壊するのか?|正直、誰にも分からない
多くの人がこう思うのではないでしょうか。
「結局、バブルはいつ崩壊するのか?」
正直に言えば、
それを正確に当てることは誰にもできません。
過去を振り返っても、
- 崩壊前には「もっと上がる理由」が必ず存在した
- 崩壊後になって初めて「バブルだった」と分かる
というケースばかりです。
9. それでも見るべき「兆候」はある

完全な予測は不可能でも、
警戒すべき兆候は存在します。
JPモルガンや過去のバブルから見えてくるのは、
- レバレッジが急拡大しているか
- 引受基準が明らかに緩んでいないか
- 利益やキャッシュフローを伴わない企業が「物語」だけで評価されていないか
- 誰もが「今回は違う」と言い始めていないか
といった点です。
これらが同時に進行し始めたとき、
バブルは終盤に近づいている可能性が高まります。
10. バブルにどう対処すべきか|極端を避ける
ここが、私自身が最も大切だと感じている部分です。
- バブルが怖いから、すべてのリスク資産を避ける
- しかし、AIを中心に市場が上昇し続ける可能性も高い
この状況で、
リスク資産を持たないこと自体が、大きな機会損失になる
という点も、忘れてはいけません。
現実的な方法として、
- 一点集中しない
- 取り残されない程度には市場に参加し続ける
- 同時に、守りの資産も組み合わせる
という姿勢だと思います。
まとめ|構造を理解する
JPモルガンのOutlook 2026を読んで改めて感じたのは、
- 未来を正確に当てることはできない
- しかし、世界がどこに向かっているのかなどの構造を理解することはできる
ということです。
AIバブルがいつ崩壊するかは分かりません。
しかし、
- 分散
- 時間
- 資産の役割分担
を意識することが重要です。
楽観と警戒の両方を持ちながら、極端に振れない。
それが、
これからの時代には、
最も重要なスタンスではないでしょうか。
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