関税の副作用──“景気刺激”のはずが市場を冷やした理由
関税──本来は自国の産業を守り、景気を刺激するための政策だ。 だが、2025年4月。トランプ政権が中国に対して導入した125%という異常な高関税は、思いもよらぬ形で市場を冷やした。
株価は急落、消費者信頼感は2022年ぶりの低水準に。 市場がこれほどまでに過敏に反応したのは、なぜだったのか?
そもそも、関税の目的とは何か?
関税の表向きの目的は、以下のようなものだ:
- 海外からの安価な輸入品を抑制し、国内産業を保護する
- 国内の製造業の雇用を増やす
- 相手国への報復措置として圧力をかける
こうした説明は、過去のトランプ政権の発言や政策資料にもはっきりと見られる。
しかし── 関税率が125%を超えると、それはもはや実質的に“貿易の遮断”に近い。 市場関係者の間では、「100%以上の関税なんて、もはや笑い話」とさえ言われる水準だ。
本当にそれだけが目的だったのだろうか?
探偵パンダの仮説①:金利と財政への“裏目的”
私が注目したのは、関税が
「インフレを引き起こすための政治的な手段」
であった可能性だ。
なぜなら、インフレが進めば、実質的な政府債務の負担が軽くなる。 つまり「お金の価値が下がる」ことで、借金の重さも軽くなるわけだ。
2025年現在、米国の財政赤字は過去最大の36兆ドル。 前政権の大盤振る舞いの反動で、利払い費も雪だるま式に増えている。 そんな中で、トランプ政権は「増税」というカードは切りたくない。 だからこそ、関税という“非課税風”の徴収手段が魅力的だったのではないか。
さらにもう一歩進んだ仮説がある。 それは──
「関税で市場を揺らがせ、FRBに利下げを促すためだった」
というものだ。
仮説②:FRBへの“間接的プレッシャー”
トランプ政権は、以前から10年債利回りを強く意識していた。 利回りが高いままでは、住宅ローンや企業の資金調達に悪影響が出る。
しかしFRBは慎重姿勢を崩さず、政策金利の据え置きを続けていた。 ならば、市場を少し揺らがせればどうか──?
実際、関税導入直後に起きたのは:
- S&P500が+9.5%急騰 → 翌日に-3.4%急落
- 米国債も売られ、10年債利回りは高止まり
- 消費者信頼感指数は2022年ぶりの低水準
想定外の過剰反応だったのだろう。
市場の混乱を前に、トランプ政権は関税の**「90日間の一時停止」**を発表。 これは、政権側が「さすがにやりすぎた」と判断した証拠のように見える。
結論:これは“政策”という名の実験だったのかもしれない
関税政策の裏には、「金利を下げたい政権」と「動かないFRB」の静かな戦いがあった。
景気を刺激したい政権。財政を守りたい財務省。 動かざるFRB。揺れる市場。
それぞれの立場が交差した結果が、今回の“関税ショック”なのだとすれば── それは、単なる貿易戦争ではなく、**金融・財政・通貨の三重構造を揺さぶる“実験”**だったのかもしれない。
※この記事は、探偵パンダによる“ひとつの仮説”にすぎません。 正解は誰にもわかりません。一緒に「考える」時間を楽しんでいただければ嬉しいです。
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