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やがみ『僕の殺人計画』ネタバレあり 徹底解説!

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書評

天才編集者vs殺人作家の頭脳戦を描いた心理ミステリー『僕の殺人計画』。

本作品の見どころは、緻密に構築されたプロットと、読者の予想を裏切る衝撃の展開の数々。

私なりの考察も記載しています。

作品紹介

著者: [やがみ]

出版年: [2023/11/7]

あらすじ

天才ミステリー編集者・立花は幼い頃からミステリーに夢中で、数々の重版ベストセラーを生み出してきた。

しかし、盗作疑惑をかけられ降格・部署移動を余儀なくされる。

そんな立花のもとに差出人不明の封書が届く。

その中には自らが完全犯罪の犠牲者となる短編小説の原稿が入っていた。

誰がこの計画的殺人を企てたのか? その目的は何なのか? そして立花は本当に殺されてしまうのか?

書評

緻密に練り込まれた珠玉のプロット

この作品の最大の魅力は、緻密に練り込まれたプロットにあります。

ミステリー編集者VS殺人作家による頭脳戦。

少し変わった設定で物語が展開されます。緻密に練れたストーリー構成で読者を翻弄されるでしょう。作品の特徴上、話は二転三転するので、誰の視点で物語進んでいるかわからなくなる部分があることは否めません。

  • 主人公である編集者・立花に差出人不明の封筒が届く
  • その中には立花自身が完全犯罪の犠牲者となる小説の原稿が入っていた

恐怖心を抱きながらも好奇心が勝り立花は著者と接触を始め、そこから互いに欺きあう心理戦が幕を開けます。

読者の期待を裏切る鮮やかな展開

物語の構成は、以下のように組み立てられています。

前半はミステリー作家VS編集者の対立構造

しかし、徐々にそのフレームワークが崩れ、サイコパス的な人物の深層心理が描かれるように

そして最終的には誰も予想し得ない衝撃の結末へと至ります。

このように、作者は巧みに読者の予想をくつがえしながら、新たな驚きを次々と提示していきます。2人の心理戦を期待している人にとっては残念な部分ではありますが、この緊張感の連続が作品の面白さを一層高めています。

二面性を持つ主人公・立花&舞台設定

敏腕ミステリー編集者の立花は、作品の中心的な存在です。彼には以下の二つの側面があります。

  1. 知的で冷静な一面
    • 卓越した思考力と推理力を持つ
    • 多くの重版ベストセラーを生み出してきた
  2. サイコパス的な一面
    • 理不尽な行動や発言にも一貫性がある
    • 作中でも随所で見られる闇の部分

このように立花には光と影の二面性があり、思考と内面の緻密な描写にり作品を盛り上げます。

作品の舞台は出版界の裏側です。

暴力的な描写はほとんどなく、あくまで心理戦がメインの作品となっています。そのため臨場感あふれる心理描写が多用されています。

特に終盤では手に汗握る緊張感があり、本格心理ミステリーの醍醐味が味わえます。

全体的にライトな文体で非常に読みやすく、作中に散りばめられた違和感や謎の回収も見事です。プロローグからエピローグまでの展開は衝撃的で、読了後の余韻も抜群です

まとめ

  • プロットの緻密さと見事な展開
  • 両極の性格を宿す深みのある主人公
  • 心理戦を描く臨場感抜群の心理描写
  • 緊迫のラストとその余韻

心理ミステリー好きならおすすめの一冊です。ぜひ劇的な展開とラストの衝撃に酔いしれてみてください。

考察

注意!! ここから下ネタバレ有り 

タイトルの本当の意味

一見するとタイトルの「僕の殺人計画」は、作家(羽鳥)が編集者(立花)に対して企てた殺人計画を指すように思えます。

つまり「作家・羽鳥」=「僕」を意味している

しかし、編集者・立花の秘密が明かされるにつれ、タイトルの意味も変化してくる。

実は「編集者・立花」=「僕」を指す言葉で、立花が羽鳥に対して企てた計画だったのです。

ただし、このように解釈するのも作者のミスリードです。

獄中の立花は「最も美しい殺人とは、犯人が何もしない殺人」と語るのです。

つまり「僕の殺人計画」とは、立花自身は何もせずに死者を出す計画であったと考えられます。

そしてその「駒」に使われたのが、立花の息子・涼介でした。

立花が実現しようとしたのは、

  1. 物理的に他人を死に追いやること(涼介に殺人を起こさせる)
  2. 息子を社会的・精神的にも「殺す」こと

この2つが本当の「殺人計画」だったのではないでしょうか。

息子の名前に隠された秘密

主人公は「涼」、息子は「涼介」と名付けられています。

この名前が明確に提示されるのは終盤です。

これは作者による陳述トリックのためにつけられた名前である可能性が大きいです。

しかし、別の解釈もできます。

「介」には「仲介」「媒介」といった、2つのものの間をつなぐ意味があります。

幼い頃から殺人に興味があった「涼」と、「殺人」の間を仲介する役割を「涼介」に課したのかもしれません。

このように考えると、「涼介」を介して殺人を行うというゾッとする解釈ができます。

タイトルや登場人物の名前にも、作者は様々な伏線を仕掛けているのかもしれません。こうした細部への注目することで、作品をより楽しむことができるでしょう。

総評

緻密に構築されたプロットと、読者の予想をくつがえす展開の数々。加えて、深みのある主人公描写や、緻密な会話による心理描写は、見事な出来映えです。

ストーリの展開や構成には若干の粗さがあり読みにくい部分もあるかもしれませんが、物語の隅々まで伏線を張り巡らせ、読者を最後まで翻弄し続けます。

3.8

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