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[話を戻そう] #書評・考察・感想

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書評

幕末の佐賀藩を舞台に、歴史とミステリーが交差する物語「話を戻そう」。主人公の岩次郎が謎解きに挑む中、著者の独自のアプローチが物語を独特な方向へ導きます。果たして、断線に次ぐ脱線の先に隠された真実とは?歴史好きにはたまらない一冊かもしれませんが、ミステリーを楽しみたい読者は要注意!!

あらすじ、感想、考察を記載しています。本書の魅力と難しさを探っていきます。

作品紹介

著者: [竹本健治]

出版年: [2023/4/30]

あらすじ

からくり儀右衛門の孫、田中岩次郎が、怪奇な出来事に立ち向かう様子を描いた歴史ミステリー。幕末の佐賀藩を舞台に物語が進行していくが・・・

メインストリーの間に差し込まれる膨大な情報量の史実により、話は横道に逸れまくり、なかなかストーリーが進まない。

脱線に次ぐ断線、その先に隠された真実とはいったい何か?

書評

結論から言って、「話を戻そう」 は非常に読みにくい作品です。この本は、読んでいて不思議な感覚になり、一般的なミステリー小説とは異なる趣があります。

読みにくさの要因

・本筋であるストーリーがなかなか進まず、著者の歴史解説や豆知識が滝のように流れてくる。

・タイトルにもあるように、物語が脱線していく度に「話を戻そう」という言葉が現れます。しかし、これはミスリードで実際には戻ることなく、さらなる脱線へと進んでいく点も読みにくさの原因です。本筋のストーリーを忘れたときにふと話が戻るため、さらに読みにくくなっています。

エンタメとしての視点

この本を読みにくいと感じる人は少なくないと思う。しかし一つのエンタメとしてとらえたとき、メインストーリーの脱線を、読みにくと感じるだけで留まるか、脱線の諄さに面白さを感じるかは読みてしだいだと思う。著者の初の偏愛歴史ミステリーとしいるが、ミステリー要素は非常に少ない。

舞台と登場人物

  • 舞台: 幕末の佐賀藩
  • 主要登場人物:
    • 田中久重
    • 孫の岩次郎(探偵役)
    • 江藤新平
    • 鍋島直正

ミステリー要素

作中では6つの事件が扱われている。からくり儀右衛門の孫が探偵役として活躍しているため物理トリックを使用した話が多く、結末はやや難解です。

読者層

佐賀の歴史に詳しい人や歴史好きの方には刺さる1冊かもしれませんが、ミステリー好きにとってはやや物足りなさを感じるかもしれません。

歴史に詳しくない私自身にとって、「話を戻そう」は史実パートが非常に読みにくい作品でした。ここまで極端な脱線話が続くと、いつ話が戻るのかそれが楽しみでもありました。

著者がなぜこのような歴史ミステリーを書いたのか、その背景にはメタミステリーやアンチミステリー得意分野としていることが考えられる。アンチミステリーとは、「推理小説であるが、推理小説であることを拒絶する」というジャンルを指し、竹本健治氏の作品「匣の中の失楽」を含め、いくつかの作品がこのジャンルに属しています(三大奇書;黒死館殺人事件、虚無への供物、ドグラ・マグラ)。本作品もミステリー小説と言っているが、幕末佐賀の史実が物語の大部分を占めている点からも、アンチミステリーの要素が強く表現されているのではないだろうか。

やたら情報量の多い閉じられぬままの挿話もある、いささかいびつな物語である。とりわけ解説が延々と続き、なかなか本筋に戻らないのに面喰らわれた向きも多いだろう。ただ、歴史というものが切り取られた空間に収まるような閉じたものではなく、無数の回路によって否応なく開かれた多様体である以上こういう形での書き方にもそれなりの意義があるのではないだろうか。そしてここまで来てしまうともう話は元に戻せない。

「話を戻そう」 

最後に、本作品は意味ありげな文章を残し、幕を閉じます。

竹本氏がこの作品を通して、単なるミステリー小説や歴史小説ではなく、歴史そのものが物語であることを表現したかったのではないでしょうか。歴史もまた一部始終でしかなく、すべての事象を把握することは不可能です。本作品は幕末の佐賀藩を舞台に、史実を背景として本筋のストーリを展開している。そのバックグラウンドの割合が多すぎているのは否めない。ミステリー小説としてはやや疑問が残りますが、歴史書としてもまた異なる一冊であることは間違いありません。

竹本氏は作品を通してはミステリー小説を書きたかったのか、私は違うと思う。では歴史小説を書こうとしたのか、それもまた違うと思う。竹本氏はこの作品を通し、歴史とは何か、今まで語られてきた歴史そのものが物語(=小説)となっていることを表現したかったのではないだろうか。「物語」とは主に人や事件などの一部始終について散文あるいは韻文で語られたものや、書かれたもののことを指すと定義されている。歴史も同様に一部始終でしかない。すべての事象を把握することは不可能である。本作品は幕末の佐賀藩を舞台に、史実を背景として本筋のストーリを展開している。ただ本作品はその背景パートの割合が多くなってしまっただけかもしれない。ミステリー小説と言われればやや疑問は残るが、歴史書と言われればそれもまた異なる。事実を織り交ぜながら語られた小説であり、小説(=物語)の多様性を表現していたのかもしれない。

メインストーリの抜粋

脱線につぐ、脱線の本作品。時間のない人向きに、メインストーリー部分のをも抜粋しています。

ご活用ください。

※史実パートにも一通り目を通しましたが本筋のストーリにあまり影響していいないと思います。伏線の見落としはあるかも・・・( ;∀;)

例:1・14⇒意1ページの14行目から5ページの

  • 商人屋敷の怪
    • 1・1~10・19(1ページ・1行目~10ページ・19行目)
    • 16・13~18・2
    • 19・8~21・7
    • 21・12~22・15
    • 24・15~26・2
    • 33・10~33・9
    • 34・5~30・19
    • 38・14~
  • 切り落とされた首
    • 41・1~44・4
    • 49・3~53・1
    • 61・9~65・8
    • 66・14~72・14
    • 73・14~75・17
    • 76・9~78・4
    • 79・7~82・13
    • 91・15~100・6
  • 捨参号牢の問題
    • 106・3~110・7
    • 115・13~122・3
    • 122・17~124・4
    • 124・18~126・10
    • 131・4~
  • 嘉瀬川人切り事件
    • 142・17~143・12
    • 149・14~154・3
    • 154・18~162・10
    • 164・9~
  • 時計仕掛けの首くくりの蔵
    • 181・1~185・1
    • 193・9~194・2
    • 195・13~196・19
    • 198・5~199・14
    • 200・3~
  • からくり曼荼羅
    • 231・11~235・14
    • 251・1~268・6
    • 271・14~275・3
    • 276・9~278・2
    • 278・10~

総評

「話を戻そう」は、読みにくい部分もあるものの、著者の独自のアプローチや佐賀県への深い愛情が感じられる作品です。史実の解説や挿話が多く、物語が中断される感覚になることもありますが、その一方で、歴史の無数の側面や複雑さを表現するためにこのような形式が選ばれたと考えられます。また、著者がアンチミステリーの要素を取り入れていることも作品の特徴の一つであり、歴史と物語の融合を試みています。読者にとっては、歴史に興味を持つ方には魅力的な作品となるかもしれませんが、ミステリー小説を読みたいと思う方にはあまりお勧めはできません。

2.8

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