ミステリー小説の世界に新風を吹き込んだ作品「変な家」。間取り図からひもとく家の不可解な秘密を描いた”不動産ミステリー”です。覆面作家・雨穴氏による本作は、出版当初から話題を集めています。そして2024年3月15日には、間宮祥太朗さん主演で映画化されるなど、文芸から映像作品へと展開する人気ぶりです。本作の魅力と驚きの結末、そして映画化への期待を、あらすじと書評を交えてご紹介します。
あらすじ
謎めいた不動産の間取りに隠された秘密を解き明かす「不動産ミステリー」
物語は、ある日、覆面ホラー作家の雨穴が知人から都内の中古一軒家の間取り図をもらうところから進行。一見普通に見える間取りには不可解な空間が存在しており、設計士の知り合いに相談することに。調べていくと不可解な間取り図の真相が明らかになっていく。
不可解な間取りの真相は一体何なのか???
書評
「変な家」(雨穴著)は、主人公と登場人物との対話形式で物語が進行するため、読みやすさが魅力の一つとなっています。
ミステリー小説というよりは、オカルト要素の強い作品です。序盤では奇妙な間取り図から謎解きという、ミステリー的な要素が多く盛り込まれています。しかし、後半の真実が明らかになるパートでは、オカルト要素が増えてきます。
物語の展開としては荒唐無稽とも思える描写もありますが、間取り図という一風変わったきっかけからのストーリー展開は素晴らしいと言えるでしょう。
物語の根幹となるテーマが家柄問題やマインドコントロールなどにとどまっており、衝撃的な事件展開はないため、物足りなさを感じる人もいるでしょう。
主人公の人物造形には大きな特徴はありませんが、知人の設計士・栗原さんは魅力的なキャラクターとなっています。2人がタッグを組んで間取り図の謎を解き明かしていく様子は、ミステリー小説らしい趣があり、楽しく読むことができるでしょう。
奇妙な家の間取りから次々と新たな謎が発見され、オカルト的要素を取り入れた展開へとつながっていく物語は斬新的です。ミステリー・ホラー小説が好きな読者には楽しめる一冊と言えそうです。
個人的な意見と感想
後半のオカルト・ホラー的な描写は、横溝正史の作品を彷彿とさせる世界観で、私個人としては好みの部類でした。ただし、このようなジャンル作品は賛否が分かれるところも大きいと感じます。
一方で、序盤のミステリー要素は非常に面白く、次々と間取り図の謎が明らかになっていく展開は、非常に面白いと感じました。前半部分に比べると、結末パートはやや見劣りする部分もあり、少し失速した印象を受けました。近年は最終部分の衝撃的な展開で読了後に強い印象を残す作品が増えているため、それらと比較すると物足りなさもあるかもしれません。
しかし、間取り図から徐々に奇妙な家の秘密が明らかになっていく展開自体は非常に面白く、新たなミステリージャンルとも言えるでしょう。全体を通してのストーリー構成や時代背景設定なども、私の好みにぴったりだったため、総じて気に入った作品となりました。
また、2024年3月15日に間宮祥太朗さん主演で映画化されるとのことで、実写版ではどのような演出になるのか楽しみです。特に私は、栗原さん役の佐藤二郎さんがぴったりはまっているのではないかと期待しています。
総評
「変な家」は、ミステリーとオカルトの融合が生み出す独特の世界観で、読者を引き込む魅力があります。オカルト要素やミステリー要素が好きな方には楽しめる一冊です。間取り図から始まる謎解きのストーリー展開は斬新であり、不動産にまつわるミステリーの新たな可能性を示しています。
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