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小川哲 「君のクイズ」

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書評

イントロダクション

丁寧なクイズ描写が魅力的。クイズプレイヤーの思考過程がまるわかり!!

今回はこのミスにもランクインした小川哲先生の君のクイズをご紹介。

あらすじ

テレビの生放送クイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝戦で、三島玲央の対戦相手である本庄絆が、問題が読み上げられる前に正解を言って優勝した。三島はこの不思議な出来事を疑って本庄について調べ始める。決勝戦の問題を一つずつ検証し、そして自分と対戦相手の人生を振りかえる。明かされる真実とはいったい何か??

書評

本作のストーリーは非常にシンプルで、クイズ番組中に起きたゼロ文字押しの真相を主人公と対戦相手の人生を振り返りながら追及していきます。

最大の謎が序盤に提示されることで、次の展開への期待を高める一方で、シンプルな構成であるため物語の起伏に乏しく、場面転換が淡々としているため、物足りなさを感じる方もいるかもしれません。

タイトルからもわかる通り、クイズがこの作品のテーマです。クイズプレイヤーの思考過程や謎解きが細部にわたって描写されています。作中にも数々のクイズが登場するので、クイズ好きにもたまらない1冊と言えるでしょう。

個人的な意見と評価

作品を読み終わり一つ疑問が残った。対戦相手の本庄絆がなぜ悪者的な設定にされたのか?

本庄が作中で話した感動的なストーリーでも綺麗にまとまっているように感じた。しかし実際にはクイズをビジネスの道具としか思っていない描写を書き、悪役的な印象を与え物語は完結した。これは作者に何らかの意図があると感じられた。

ひとつには、主人公との対比を鮮明にする意図があったのではないか。主人公が生涯をかけてクイズに情熱を注いできたのに対し、本庄はクイズビジネスツールとして利用することで、対比構造を作ることができる。

主人公はこれまでクイズに情熱を注ぎ、人生をクイズとともに歩んできた。時にはクイズによって自分自身を肯定されるような経験もしています。

この対比構造を作ることで、より主人公の人生に輝きを持たせることができたのではないかと思う。

作中最後に

「ずばり、クイズとは何でしょう」

僕はボタンを押して「クイズとは人生である」と答える

君のクイズより

という描写がある。

クイズの楽しさ、素晴らしを伝えるため作者からのメッセージかもしれない。

また昨今のクイズブームの影響も大きいかもしれない。純粋にクイズを楽しむ人々もいますが、クイズをビジネスの道具として活用する人たちも存在している。これは悪いことではないが、その側面を描写することで、作者が時代の風潮に対する一種の皮肉や社会的な視点を示していたのかもしれません。

総評

本作はシンプルながらも緻密なストーリー構成で、クイズにまつわる謎解きや思考過程が読者を引き込む要素となっています。登場人物の設定における悪者的な描写は、主人公との対比を通じて物語に深みを与え、クイズの本質について考えさせられる作品となっています

3.5

終わりに

クイズをテーマとしたミステリー小説は決して多くありません。しかし本作は、クイズへの思い入れを感じさせると同時に、登場人物の人生観の違いに着目させる点で斬新な1冊です。物語の結末には、作者自身のメッセージが込められているように感じられ読後余韻の残る作品といえるのではないでしょうか。

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