今村昌弘氏による青春ミステリー小説『でぃすぺる』は、オカルトとミステリーが見事に融合した傑作です。小学6年生の少年少女たちが、ふるさと奥郷町の「七不思議」の謎を追うストーリーは、ページをめくるたびに読者を興味深い世界に誘います。
本記事では[でいすぺる]の魅力を解説していきます。
あらすじ
小学生最後の夏休みが終わり、2学期が始まった奥郷町。オカルト好きのユースケは、自分の趣味を壁新聞でアピールしようと掲示係に立候補します。すると、相方に立候補したのは学級委員をしていたサツキでした。サツキが立候補した理由は、去年従兄弟のマリ姉が何者かに殺され、その事件の犯人がまだ捕まっていないことでした。
そんなマリ姉が残した「奥郷町の七不思議」をもとに事件の真相にせまってくる。
事件の真相は怪異かとれとも殺人事件か?
書評
プロットについて
物語は奥郷町の七不思議を題材にし、オカルト要素とミステリー要素を見事に融合させています。七不思議の謎は、物語を進行させる中でミステリー小説さながらの謎解き要素を含んでおり、そのバランスの良さが際立ちます。読者は物語が進むにつれ、オカルト的な要素とミステリー的な要素が絡み合い、緊張感を高めていきます。
登場人物
物語を彩る個性的な登場人物も魅力的です。以下に3人の主要人物を紹介します。
ユースケ、サツキ、ミナという個性豊かな登場人物たちが、物語を牽引しています。ユースケはオカルト好きな少年であり、アヤ姉の死には怪異現象関係していると推理する。一方、サツキは合理的な視点で事件に迫り、怪異現象には否定的。ミナは中立の立場からそれぞれの推理の欠点を指摘していく。この三者の対立構造が、物語に緊張感や興味深さを与えています。
本作では、三人の少年少女が冒険に挑む姿が描かれています。彼らが奥郷町の七不思議を解明する過程で、読者はわくわくとした興奮を感じるでしょう。小学6年生と制限の中で事件の謎に挑む様子は、まさに少年探偵団のような魅力を放ちます。
【個人的な意見と感想】
意表を突かれた見事な筋書き
率直な感想から述べますと、この作品の筋書きには満足しています。最終的には怪異現象ではなく人為的に起きた事件として結末を迎えると予想していただけに、意表を突かれました。一方で、オカルト要素が入り込んだ結末であったため、一般的なミステリー小説の定義から外れているとも思います。
ミステリーとしての評価
この作品をノックスの十戒に当てはめると、ミステリー小説としては疑問を感じる部分もあります。しかし、私個人としては、ギリギリのラインでミステリー小説と呼べると思います。また、小学6年生という行動制限が物語に独特の緊張感を与えており、クローズドサークルさながらの制限がうまく設けられていたと感じました。
結末がオカルト的要素ではありましたが、推理過程はまさにミステリー小説そのものでした。
子供たちの活躍が楽しい
私は少年探偵団などの子供たちが活躍するストーリーが好きなので、本作も楽しく読むことができました。
主要キャラクターであるユースケ、サツキ、ミナの距離感もよく対立構造ではありましたが、
お互いを傷つけあうようなストレスのある関係ではなく、読んでいて心地よい緊張感を味わえました。
総評
『でぃすぺる』は、オカルトとミステリーの要素を上手く融合させた傑作青春小説です。奥郷町の”七不思議”を舞台に、少年少女たちの冒険が描かれています。ミステリー性の高い推理と不可思議な現象の謎が絡み合い、読者を物語の世界に惹きこみます。
キャラクター同士の緊張感と心地よい距離感も魅力で、3人の個性的な主人公たちの活躍に思わずワクワクします。オカルト的な結末にも驚かされながら、ミステリーの醍醐味も十分に味わえる作品に仕上がっています。
ミステリー小説のみならず、ホラーやヤングアダルト小説が好きな方にもおすすめの一冊です。青春の懐かしさと冒険心を呼び起こしてくれる作品なので、是非一読されることをお勧めします。
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