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「書評の書き方完全ガイド|ミステリー小説を例に詳しく解説」

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読書

あなたは小説を読んだ後、感想をどうしていますか?

頭の中で考えを巡らせるだけでは、あまり印象に残らず忘れてしまう事も多いのではないでしょうか。

そんなときは書評を書いてみるのがおすすめです。

書評を書く練習をすることで、以下のようなメリットが得られます。

【書評を書くメリット】
  • 文章力、言語化能力が身につく
  • ライターとしての副業にもつながる
  • 本の理解が一層深まる
  • 客観的な批評力が身につく
  • ジャンル専門知識が身につく

書評を書く作業を通して、自身の思考を文章化する訓練ができ、文章力が自然と身につきます。

上達すればライターとしての活動の糧にもなります。

また、書評を書くには細部までの作品理解が求められるため、普通の読書以上に内容の深い理解ができます。

さらに、自身の感想を整理して書評を書くことで、客観的な批評眼が養われます。

ジャンル小説の場合は、そのジャンルの特性や専門用語も自然と学んでいくことができます。

このように、書評を書く作業を続けることには大きなメリットがあります。

しかし、どのように書けばよいのかわからず挫折してしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、初心者でも参考にできるミステリー小説の書評の書き方を解説します。

書評の構成

書評には一定の構成があり、以下の7つの項目を含めるのが一般的です。

  • 作品紹介 (タイトル、著者、ジャンル、出版年)
  • あらすじ
  • 登場人物紹介
  • 本書の魅力ポイント
  • 個人的な意見・感想
  • 一押しのシーン/名セリフ
  • 総評

それぞれの詳しく見ていきましょう。

実際にこのブログで投稿してある書評記事をみながら、解説していきます。

【作品紹介】

まずは作品のベースとなる基本情報を正確に記載します。

『ぎんなみ商店街の事件簿』の書評記事より

作品情報に関してはシンプルでOK!!

『タイトル』『著者情報』だけでもいいです。

【あらすじ】

あらすじはストーリーの肝を簡潔にまとめます。

例①
古き良き商店街で起きた3つの事件をもとに物語が進行。それぞれの事件について、四兄弟と三姉妹が捜査にあたります。それぞれの視点で物語進行し異なる真相にたどり着く…

『ぎんなみ商店街の事件簿』の書評記事より

例②
大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿をめぐる物語。2063年、響子の遺作「鏡の国」に削除されたエピソードがあると発覚し、その謎に迫る展開です。作中小説に登場する4人の複雑な人間関係と、幼少期の事故の真相究明をめぐるミステリー。読後にある衝撃な結末とは・・・

『鏡の国』の書評記事より

核心部分を伝えつつも、ネタバレには十分気をつけましょう。

あらすじの書き方はいくつかあります。

  1. 起承転結を意識して書く
    物語の導入部分(起)、展開部分(承)、かく乱の生じる部分(転)、そして結末(結)の4つの要素を意識し、あらすじにも反映させます。
  2. ストーリーの節目となる出来事に焦点を当てる
    物語の大きな展開や転換点となる出来事には、重点を置いて説明するとよいでしょう。

はじめてあらすじを書くときは、本帯に記載されているものを参考にしていくこともおすすめです。

【登場人物紹介】

主要人物3-5人程度を取り上げ、年齢、肩書き、特徴的な性格を捉えつつ簡単に紹介します。

  • 香住響子
    物語の主人公。元アイドルで、現在はライターとして働いている。「身体醜形障害」を発症しており、自身の容姿に強いコンプレックスを持っている。
  • 吉瀬伊織                                             幼少期から響子たちと近所で遊んでいた。現在は料理人として仕事をしている。幼少期から相貌失認を患っており、人の顔を認識することができない。
  • 新飼郷音                                                      響子の幼馴染。幼少期の火事が原因で顔に重度の火傷の跡がある。
  • 久我原巧                                                   響子の職場の同僚。響子がライターとしての仕事につくきっかけを作った人物。

『鏡の国』の書評記事より

【書籍の魅力ポイント】

これが書評の核となる部分です。最重要!!

以下の観点から作品本来の”魅力”を選び、具体的な場面エピソードやセリフを引用しながら解説していきます。

  • ストーリー構成・プロットの魅力(展開、伏線、構成の工夫など)
  • 登場人物の魅力(心理描写、個性的な設定など)
  • テーマ性の高さ(作品が伝えたいメッセージなど)
  • 世界観や舞台描写の魅力

ストーリー構成・プロットの魅力(展開、伏線、構成の工夫など)

巧みな伏線と予測不能な展開
『鏡の国』は序盤から丁寧に描かれた伏線が、後半に向けて徐々に回収されていく構成が特徴です。読者を翻弄するような予測不能な展開が、ラストまで目が離せません。人間模様の描写もさることながら、ミステリー要素もピカイチです。
火事の真相では入れ替わりトリック、また『鏡の国』のストーリー上で仕掛けられたミスリードや小説そのものにある削除されたエピソードの謎など、多岐にわたる仕掛けが施されていて、読んでいて非常に面白いと感じます。

『鏡の国』の書評記事より

ストーリの展開(起承転結がしっかりしているか、驚きの展開があるか)、伏線回収(伏線の張り方、回収のさせ方が巧みか)など小説のプロットについて記載します。

個々の視点も重要ですが、客観的な視点も重要となってきます。

登場人物の描写

例①
物語には、今は亡き4兄弟の母の思い出描写や、他の登場人物が語る母親の真の姿が随所に登場します。これにより、物語に深みが加わり、登場人物たちの背後に潜む複雑な感情を垣間見ることができます。

『ぎんなみ商店街の事件簿』の書評記事より

例②
作品の魅力は、登場人物たちの入り組んだ心情描写にある。憎しみ、愛情、嫉妬、憧れ、狂気など、複雑に絡み合う感情がリアルに描かれており、心を深く揺さぶられる。登場人物一人ひとりが丁寧に描かれ、発言の意図、解釈の違いが人間関係に亀裂を生むさまは見事である。

『神様に愛されていた』の書評記事より

主要人物の心理や性格について記載することも重要です。

登場人物あっての物語ですので、優れた小説には素晴らしい登場人物が多く登場することでしょう。

私が重要視しているてんとしてはリアル感

個性的で魅力的な人物設定になっているか記載していくといいでしょう。

テーマ性

本作品の真のテーマは「物語と作者の関係性」なのではないでしょうか。小説は架空の世界と架空の人物によって生み出される物語です。すべては作者によって創造されたものなのです。作者には望み通りの世界を作れる”絶対的な力”があります。しかし一度作品ができると、作り手である作者よりも登場人物の活躍や物語そのものに目が行きがちで、作者自身の思いがないがしろにされてしまうこともあるかもしれません。ホームズシリーズは優れた作品ですが、ドイルが望んだ世界線を描けなかったという面では、不遇な作品とも言えるでしょう。私たち読者は、物語の結末だけでなく、作者への敬意と感謝の気持ちを忘れずにいることが大切なのかもしれません。

『シャーロックホームズの凱旋』の書評記事より

※文章序盤に作品のテーマを提言し、そのあとに理由を書いています。実際にテーマの正誤は関係なく、自分がどの様に解釈したのかをしっかり理由かければ問題なし。

それぞれの作品には何らかのテーマが設けられていることが多いです。

作品から読み取れる重要なテーマやメッセージを紐解き、自分なりの解釈でもいいので記載してみてください。

作者個人の体験や思想、そして作品が書かれた時代背景を踏まえることで、作品に込められたテーマや作者のメッセージがより深く理解できるはずです。

また登場人物の行動や心情の変化、作品に使われている象徴的な表現にも注目することが大切です。

世界観

京都とロンドン、二つの異なる世界観
舞台は京都と、ロンドンからかけ離れた土地柄です。原作のおなじみの人物たちも登場しますが、ホームズとの関係性は大きく異なります。たとえば最大の宿敵ジェイムズ・モリアーティーさえも、ホームズと同じくスランプに陥り、二人で傷の舐め合いをしている始末です。このようなギャップが一種の味わいとなっています。

『シャーロックホームズの凱旋』の書評記事より

作品の世界感をつ伝えるものおすすめです。

非現実的な世界であっても、小説であるため表現できるものも多くあります。

世界観や舞台を生き生きと描いた箇所を、作品から直接引用することもおすすめです。読者に臨場感を持って想像してもらえます。的確な言葉の選び方が作品の魅力を伝えられるポイントです。

以上っ書評をしていく上で重要なポイントを4つ紹介してきました。

このような観点から、作品本来の”魅力”となる要素を選び出し、具体的な場面やセリフを引用しながら丁寧に解説することが大切です。また単に良かった点を羅列するのではなく、”なぜ”その要素が魅力的なのかという理由も加えると説得力があります。

【一押しのシーン/名セリフ】

作品の中で特に印象深かったシーン、名セリフを取り上げ、その意味や重要性、印象に残った理由などを解説します。

以下のようなポイントを意識して記載するとよいでしょう。

  • シーンを取り上げる
  • 名セリフを取り上げる

シーンを取り上げる

シーンの取り上げ方(2パターン)

1.シーンの描写を一部引用する

2.そのシーンの簡単な状況の説明をする

例:「”お前を殺す方法は百に一つとあるぜ”犯人は言い放った。」など

例:「主人公が人質にとられた絶体絶命のシーンでは…」など

シーンを取り上げたらそのシーンが印象的だった理由、シーン重要性などについて記載していきます。

名セリフを取り上げる

発言内容と発言時の状況を簡単に説明します

状況

「主人公の父が亡くなる直前に言ったセリフ…」など

セリフ

「”これが私の最後の望みだ”」など

そしてそのセリフの意味や重要性につてい自分なりの解釈を記載します。

シーンや名セリフを質の高い引用と共に紹介し、それらの重要性や印象的だった理由を上手く言語化することが肝心です。作品の魅力を言葉で上手く表現できるかがポイントになります。

【総評】

最後に作品全体の達成度、おすすめポイントをまとめます。対象読者層(ミステリー好きなど)に向けておすすめできるかも記載しましょう。

緻密に構築されたプロットと、読者の予想をくつがえす展開の数々。加えて、深みのある主人公描写や、緻密な会話による心理描写は、見事な出来映えです。ストーリの展開や構成には若干の粗さがあり読みにくい部分もあるかもしれませんが、物語の隅々まで伏線を張り巡らせ、読者を最後まで翻弄し続けます。『僕の殺人計画』

本作品は、伝統的なミステリー小説の枠を超えた、作家と作品の関係性を問うメタフィクション的なファンタジー要素満載な物語でした。不可思議な世界観に酔いしれながらも、物語の核心に作り手である作家の思いが隠されているのが面白い点です。森見登美彦氏の独創的な発想と筆力が光る傑作で、シャーロキアンにもおすすめできる作品です。ぜひ一読されることをお勧めします。

『シャーロックホームズの凱旋』の書評記事より

このような構成を意識し、作品の”魅力”を如何にうまく言語化できるかがポイントです。

自身の感想を加えつつ、客観性も保てる書評を心がけましょう。

ぜひ書評を書く練習をして、小説の新たな一面を発見してみてはいかがでしょうか。

今回例として挙げた記事の全文です。合わせてご確認ください。

シャーロック・ホームズの凱旋 - 傑作ミステリーの世界を超越した不思議な物語
ミステリー小説の金字塔「シャーロック・ホームズ」が、作者と作品の関係性を問うメタフィクション的な物語となって描かれる。不可思議な世界観と哲学的な問いかけに酔いしれる一冊

岡崎琢磨『鏡の国』の魅力を解き明かす
大御所ミステリー作家の遺作をめぐる複雑な物語。巧みな伏線と驚きの展開、登場人物の繊細な心理描写が光る『鏡の国』の魅力を紹介。ミステリーファンのみならず、ジャンルを超えて楽しめる傑作を堪能できる。


【ぎんなみ商店街の事件簿】 #書評
「ぎんなみ商店街の事件簿」は井上真偽さんの話題作。Brother編とSister編で1週間で重版が決定。同じ事件を異なる視点から描き、真相に挑む四兄弟と三姉妹。緻密な謎解きとキャラクターの魅力が際立つ本作品。新しい読書体験を間違いなし。


やがみ『僕の殺人計画』ネタバレあり 徹底解説!
天才編集者vs殺人作家の頭脳戦を描く心理ミステリー『僕の殺人計画』の魅力を徹底解説。緻密なプロット、衝撃の展開、深みのある主人公描写などの見どころに加え、タイトルや登場人物の名前に隠された秘密も紐解きます。ミステリー小説の傑作を読み解く。

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